治療(6)
「......はっ!! ......父上、経緯の説明を求めます。この者についても。」
王子の質問にアレンは答えた。
「こいつ......シキというんだが、おとといの闘技大会で出会ってな、クレアの病気については俺が頼んだ。」
「そのような見ず知らずの者を信用したのですかっ!?」
「見ず知らず、か。シキはこっちを知っていたようだが......まあいい。で、信用か......」
意味ありげな微笑を浮かべてこちらを向くアレン。ん? どうした?
「なんだ?」
「いや、お前ほど信用するしかない奴も珍しいと思ってな。」
なんだこいつ。いきなり失礼な。
「......?」
ほら王子君も理解できないって顔してるぞ?
「だってお前、胸先三寸でこの国占領できるだろ?」
ああ、成程。
「占領って......どういうことですか父上!!??」
「文字通り、この国を手に入れられるってことだ。シキ......いや、シキ達にはそれを遂げるだけの力がある。」
「......?」
「俺は闘技場でシキの戦いを見た。そこにはな、Sランク冒険者を物ともしない、宮廷魔導士の連中でも苦労して放つ威力の魔法を惜しみなく使い、異形となり、空を自在に舞うバケモノがいたわけだ。おまけに生半可な攻撃をしても弾かれ、腹に穴をあけられても瞬時に治ってしまう。こいつの前ではな、国王なんて大層な地位でさえ、吹けば飛んでしまうほど意味をなさない。......そうだろ? シキ?」
まあその通りだけどさ、もうちょっと言い方ってもんがあるだろうに......
「まあ否定はしない。だが別に俺はこの国を潰そうとは思っていないから安心しろ? 比較的いい政治をしているようだし、住みやすいからな。」
「そう言ってくれると有難い。で、城内に不法侵入したとはいえ、俺の娘を治してくれたことはそれを補って余りある。報酬を出そうと思うんだが......何を望む?」
「不法侵入? お前に通達はしたはずなんだがな......。報酬はこの城の中に自由に入る許可とそのことについて周知の徹底。どうだ?」
「......そんなものでいいのか? 貴族にしても......そういえば誰にも仕える気はないんだったな。いいだろう。明日から自由に出入りできるよう手配する。それでいいな?」
「それでいい。あ、あとこれをやる。こっち向け。」
いいことを思いついたのでそう言ってnMSを飛ばしてアレンの目に浸透、定着させて網膜ディスプレイを構築した。
「......? なんだ?」
「目を全力で開いてみろ。」
「......こうか? うおっ!!??」
あらかじめ決められた動作により、起動するディスプレイ。
「面白いだろ? 説明はまた明日にでもする。じゃあな。」
そう言って城内に侵入した要領で消え、その場を去る詩輝。
「おい、これどうやって戻すんだっていない!!??」
そのあといろいろ試した結果眼を大きく開ければ閉じることをアレンが知ったのは、また別の話。
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