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ギルドマスター


 「あ~、すまんかった。つい、腕試しがしたくなってな。」

......数分のにらめっこの後、さっきまでのバトルジャンキーみたいな顔に似合わないほど穏やかな口調でしゃべりだした。言ってることが完全に戦闘狂だが。


 「で、何の用だ? こっちはさっさと依頼を受けたいからできる限り手短にして欲しい。」

 「お前......少しはギルドマスターを敬おうぜ? シキ......だったな。俺は冒険者ギルドエルオス王国王都支部のギルドマスターで、ゲイルという。以後よろしくな? 期待の新人君?」


 「只今Fランクパーティー『不死の人形』所属のシキだ。よろしく。」


 そう言って俺は手を差し出し、ゲイルと握手した。


 「まだまだひよっこで弱弱しいFランク冒険者に何をしてるんだ?」

 「明らかに弱弱しくねえだろ......。Cランク冒険者のバートが登録したての新人に絡んで返り討ち、そのあと自殺しているとなれば普通その新人に興味が出てくるだろ?」


 「確かに。」

 「だから少し話を聞こうと思ったんだが......さっきのみてちょっと気が変わった。シキとそこの......トーカだったな。俺と模擬戦しないか?」

 

 ......は? 何を言っている?


 「......どういうことだ?」

 「ちょっとお前の戦闘スタイルに興味を持った。あと単に運動がてら戦いたいのもある。」


 キチガイの感性はよくわからん。


 「俺にメリットがない気がするが?」

 ......これはうまくやれば特例とかなんかでランクアップイベントが発生するかもしれない。


 「......お前、意外と図々しいのな......。何を望む?」

 「俺とこいつのランクアップ。」


 「即答か。そうだな......仮にだ、俺に勝つことができたら、の話だが......Dランクに特別に上げてやる。もうすぐランクアップ試験もあるからうまく上がればBまでいけるぞ? どうだ?」


 「ほんとにいいのか? というかゲイル......だったな、さっき俺に瞬殺されていなかったか? 忘れたのか?」

 「むぅ......。そうだな......両者......いや、お前らのスキルの使用禁止でどうだ?」

 「全然問題ない。」


 「そうか。......ああ、あと他の冒険者も観客として訓練場に入れるぞ? いいな?」

 「......? 何故だ?」

 「お前が勝つと仮定して特例とか絶対反対する奴いるだろ。そういう奴にはその場でお前と戦ってもらう。後でクレームが来るのはごめんだ。というかお前の相方は大丈夫なのか?」


 「俺とためを張れる強さはあるぞ? 問題ない......な?」

 「ないよ~」


 ......しかしゲイルの奴、クレームの対処丸投げしやがった......。が、これも俺の輝かしいランクアップのためだ。仕方ない。


 「で、今からやるのか?」

 「その通り。今朝お前たちが来る前にいた冒険者たちが待ってるぞ?」


 さてはこいつ......ろくに考えていなかったな?


 「じゃあちょっとギルドマスター様の無様な姿を観客の目に焼き付けてくるか。な、桃花?」


 「うん!」


 「余裕かよ......一応俺、元Aランク冒険者だからな?」

 (こいつらほんとに人間か? ありえねえスピードと反射神経しているが......これも二人のスキルか?)

 そう内心でいぶかしむギルドマスターがそこにはいた。



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