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ゴブリン駆除(3)


 「こんにちは。これからどうしたい?」

 とりあえず意思の確認だと思って言ってみたが、

 

 「「「......?」」」 

 どうやら唐突すぎたようだ。みんな首をかしげている。


 「悪い悪い、いきなりすぎたな。まずは自己紹介と行こう。俺の名前は詩輝。17歳だ。冒険者をやってる。数日前に冒険者登録をして今はこっちの桃花と『不死の人形』というFランクパーティを組んでいる。主な武器は今背負っている大剣だ。桃花については......さっき聞いたかもしれんが基本同じだ。何か質問はあるか?」


 質問があるか聞くと村娘っぽい顔立ちをしたおかっぱの子がおずおずと手を挙げて聞いてきた。


 「あの......なんでここまで来たんですか?」

 「その前に名前を教えてくれ。」

 「あ、はい。ルミといいます。」

 「ルミか。よろしくな。......それでここに来れた理由? ただ依頼にゴブリン駆除があったから受けて、時々出てくるのを倒してたらここを見つけたから来ただけだ。」

 ちょっと真実を隠して説明する。せっかく友好的な人を見つけたんだから怖がらせてはいけない。畏怖の視線はもうお腹いっぱいだ。


 この子がルミということはあっちのポニーテールっぽくしてる子がミナなのだろう。


 「本題に移ろう。ここで見つけた以上王都に戻るまではある程度の世話をしてやる。特にそこの......リースと呼ばせてもらう。君はどうしたい?」

 俺はこう見えて結構世話焼きなのだ。


 「......どうしたい、とは?」

 少し小声だが返してきた。結構元気だな。少しネガティブになってるようだがもっとこう、壊れててもいいと思ったけどな。......少しわかりにくかったか。


 「少しわかりにくかったか。ならこちらから少し提案させてもらう。とりあえずリースの問題から行こう。......直球で行かせてもらう。リース、君の腹についてだが、どうする? 元に戻せば立ち直れるか? 方法はある。それとも純潔を喪失したこと自体が衝撃か? そっちの価値観については少し手は付けられないが......。それとも風評か? 俺たちは黙ってやるからあとは仲間次第だ。後は......記憶か? 多少他のことも忘れるかもしれないが消すことも可能だ。さて何を望む? 別に代償は求めないから心配するな。」

 全部nMSでやるから労力や元手はゼロに等しい。


 記憶を消すことも不可能ではないのだ。記憶というのは脳細胞間のつながりの強度が変化することで記録される。ならば逆算して戻してやればいい。そんなミクロレベルの作業もnMSがあれば可能だ。まあ、完全にとはいかないから多少周りの記憶も削れるが。



 「あの......なんでそこまで?」

 おかっぱのルミが聞いてきた。

 「単に世話焼きなだけだ。気にするな。」

 ......まあ下心が1%ほどあるけどな!


 「で、どうする?」

 「このお腹を元に戻して。」

 「記憶は?」

 「いい。教訓にする。」

 なかなか強かな子らしい。

 「そうか。ちょっと待て......こいつを飲み込め。」

 腰のポーチから取り出す風を装って手の中に今日食べたものを使って錬成したnMSを少し集め、粒の薬状に成型、渡した。


 「......。」

 そんな警戒しなくてもいいだろ。


 「あ~別に死にやしないから安心して呑込め。」

 「......わかった。」

 しぶしぶといった顔をしながらも呑込んでくれた。

 「飲んだ。」

 「OK。じゃあそこでちょっとの間寝転がってくれ。」

 生化学反応が少ない方がやりやすいからな。他意はない。ほんとは下の穴から入れた方が近くてやりやすいが......そんなこと口が裂けても言えるわけがない。

 

 「......。」

 また警戒してる。俺のことそんな信じられない?

 「......別に何も変なことしないし周りで君の仲間も見ている。少しは信頼してくれないかね?」

 「......わかった。」

 またもやしぶしぶといった顔をして地面に寝転がるリース。


 「じゃあ始めるぞ。別に痛みはないから安心してじっとしてろ。」

 俺のnMSとリースの体内のnMSを接続した。すると俺の網膜いっぱいにリースの肉体情報が広がる。

 「っ!?」

 俺の網膜を見たのだろう。リースが少し驚きの声を口から漏らした。

 「落ち着け、何も問題はない。」

 (リースの子宮内に移動して全体をスキャンしろ。)

 まず移動させてスキャンだ。どうなってるかわからないと何処を取ればいいかわからない。

 (こりゃひどい。)

 どうもゴブリンは母体の子宮内に定着した後、ホルモンバランスをコントロールして妊娠した状態に持って行き、胎盤を作らせて栄養をゲット、六日後には生まれてくるという驚異的な成長をするらしい。だがその代償として母体は急激な腹部の膨張に耐えられずに生まれる直前に腹部が破裂し、死亡するのだ。三日目にしてあの大きさなのもうなずける。あと二日遅れてたら危ないところだった。

 (速やかに分解しろ。伸びた皮も元に戻してホルモンバランスを元に戻せ。あと処女膜の再生もだ。)

 「少し腹がへこむがじっとしていろ。」

 「......わかったっ!?」

 「「!?」」

 急激にへこみ始めたリースの腹を見て驚く『戦乙女』の面々。


 (分解したゴブリンの胎児は栄養に変換。リースへ還元しろ。終了次第、戻ってこい。)

 アフターケアも忘れない。栄養を取られたリースはひどく痩せていたからな。


 「終了だ。処女膜も再生しておいたから安心しろ。」

 最近感情をある程度nMSで抑制することで恥ずかしがらずに言えるようになった17歳童貞の詩輝であった。


 「......ありがとう。あなたは「詩輝だ」......シキは私を絶望から救ってくれた。この恩は絶対に忘れない。」

 「そこまで気にすんな。今度何か困ったら助けてくれればそれでいい。」

 そこまで重く受け止められても困る。ここは飯をおごってチャラっていうのが筋なんだろうが俺たちは食事が必要ないし。

 

 「そういえばお前ら装備ボロボロだな。ついでにちょっと直してやるから貸しな。後で修理するのも金がかかるだろ。」

 「「?」」

 リースを除いた二人に何言ってんだこいつって顔された。ぐすん。


 「......私は?」

 意外とちゃっかりしてるじゃないかリース。

 「服ごと新調してやる。希望は?」

 「軽くて私にピッタリな皮鎧。デザインは普通で。あと片手剣と皮の靴。服は適当に。」

 「わかった。ちょっと待ってろ。絶対に見に来るなよ。」


 そう念を押して外に出た俺はさっきnMSでとった体形データをもとに希望通りの装備を作って戻った。


 「ほれ」

 「多才......私と結婚しない?」

 「美人にそう言われるのはうれしいが遠慮させてもらおう。」

 「シキも十分美形だと思う。」

 そりゃそうだ。そうなる様にいじったからな。

 「で、そっちの二人も呆けてないで装備を貸せ。」

 「「お願い(します)」」

 ずいぶんと現金で息ぴったりだね君たち。


 そうして渡された二人の装備を修復してまた小屋へ戻った。リースはもう着たらしい。

 「ほらよ」

 「あ、ありがとうございます。」

 「......ありがと。」


 ちなみにすべての装備にnMSを少しづつ仕込んであるから強度が上がってるし、彼女たちの身が危険になったら助けてくれる仕様だ。俺からのちょっとしたプレゼントである。


 「空腹とかは大丈夫か?」

 「全然大丈夫じゃない。」

 即答かよ。我慢されるよりはいいが......

 「残念ながら俺たちは食料は持っていないんだ......これで我慢してくれ。」

 即座に装備に仕込んだnMSで大気の二酸化炭素と水分を分解、ブドウ糖を合成して装備者の血管内に投与する。


 「......? 楽になった。ありがとう。」

 「今のは一時しのぎに過ぎないからすぐにここを出て森を抜けた方がいい。ここから最短距離で歩けばたぶん夜になる前に王都に着けるだろう。行くか?」

 「行く。」

 「じゃあ行くぞ。お前たちもとっとと立て。」

 「は、はい」

 「わかった」


 そして俺たちはテントから出た。そしたらリースが、

 「......シキたちってほんとにFランク? さっきの装備と言い私の治療と言い、この惨状と言い......そうは思えない。」

 「単に最近登録したからだ。そんなに短時間でホイホイ上に行けるわけがないだろ。」

 「......確かに。今から捕まえておきたい優良物件。」

 「おいおい俺をもの扱いするんじゃない。」 なにこの肉食......俺は草食が好きなの!! 童貞は捨てたいけど!!

 「今は引いておく......。」

 「これからもそうしてくれ......。」 リースはかなり無遠慮でマイペースな性格だということがよく分かった。


 「じゃあ行くぞ。桃花は後ろを頼む。お前らは真ん中で俺についてこい。」

 「うん!」

 「ん。」

 「はい」

 「......ん。」 どうやらルミは真面目でミナはもの静かな性格らしい。



 

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