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ゴブリン駆除(2)

 シュゥゥゥゥゥ ガッ


 ゴブリンどもへの報復を兼ねた殲滅を決定した俺達は周りに人がいないことを確認、右腕の露出した部分から触手を展開して近くの木の枝に引っ掛けた。

 ......このまま突っ込んでもいいのだが、恐らく殺り損ねるやつが出てくる。赤外線視もある程度離れられると機能しないのだ。それに少しやってみたい。


 グイッと触手を操って木の上に体を持ち上げるとともに左腕に触手を展開、進行方向の木に向かって伸ばし、掴んでそっちに体を引き寄せる。といったことを数回繰り返してゴブリンの巣の真上に来た。さっきエンジェルシリーズの視界を通して見た通り二つの粗末な小屋があり、何かあったことに気づいたのか周りに30匹ほどゴブリンがうろうろしていた。


 「お父さん、捕まってる人がいるよ? たぶん女の人。あとちょっと問題もありそう。」

 「どういうことだ?」

 「見ればわかる。」

 なぜか最期を詳しく桃花が言いたがらないので俺も赤外線視を開始すると確かに掘っ建て小屋の中に体型的に女性らしいモノが3つ映った。まあ、ゴブリンにとって男は用無しだからいるわけがないが。だが......あまり知りたくない情報もあった。桃花の言いたいことは多分このことだろう。

 「なるほど......一人は犯された後か......。」

 感情をおぼえた桃花が言いにくいわけだ。三人のうち一人の腹部が異常に熱を発し軽く膨らんでいた。まあ、要はゴブリンどもにピーされて妊娠させられたということだ。ご愁傷様である。


 「ちょっとめんどくさいことになったな......。」

 そう俺はぼやいて桃花に問いかけた


 「どうしたい?」

 「助けたい。あとゴブリンは殲滅したい。ダメ?」 

 いい笑顔するじゃないか。

 「OKだ。」

 ここまで胸糞悪くなったのは初めてだ。こっちに来るまでにも結構強姦とか殺人事件とかのニュースがあったがしょせん他人事、特に何とも思わなかった。だがいざ目の前にしたこのやりきれなさ、どうにかしろと俺の少しだけある道徳心が叫んでいる。

 初めてまともに意見があったな......日本人の道徳教育よ。今まで老人や虫の命の大切さ、殴られても殴り返さない仏の精神とかさんざん聞かされてくそくらえだと思っていたが、人に何かしてあげる大切さについてこの数時間だけは同意してやる。


 「じゃあ桃花、行くぞ。最大出力で行く。」

 「あいあいさ~。」

 「GO!」

 

 ヒュンッ スタタッ

 俺たちは同時にゴブリンの巣の真ん中に降り立った。


 「ギ......。」

 「グガッ」

 「グギャギャ」

 

 俺たちの着地に気づいたゴブリンどもが一斉にこっちを向いた。


 「グギャ」

 「ギギ」

 「ガギャ」

 「グゴゴ」

 「ゴゴ」


 何やら話した後、こちらを取り囲んでじりじりと迫ってきた。

 「モテモテだね~お父さん。」

 「こんなむさくるしいやつはごめんだ。」

 「で、どうするの? 少し数が多いよ? 殺り残しが出るかも。」

 「触手の使用を許可する。遠巻きになってるやつは絞め殺せ。」

 「あいあいさ~。」

 

 シュゥゥゥゥゥ  「ギ?」ベキャッ

 桃花が20本ほど触手を展開、遠巻きにしている奴が反応した瞬間、一度に絞め殺した。

 

 「ギャ!!??」

 「ギャギャギャ!」

 「グギャ!!!!」


 「うん、うるさいから黙れ。」

 ズパァン


 ゴブリンは今の出来事に驚いたらしくパニックになったので待たずに首を一刀両断にしてやった。これが大剣のいいところ。リーチがあって一体一体相手せずともまとめて殲滅できる。


 「へえ、やるう。」

 なんか一体だけ今のをジャンプで回避しこっちに襲い掛かってきた。たぶんこいつがリーダーなのだろう。少し周りよりよさそうな剣を振り下ろしてきた。その度胸と努力には敬意を示そう。だが、


 「残念、相手が悪すぎた。」

 「だね~。」

 ガインッ ザシュッ

 桃花がひょいっと大剣を俺の前に突き出し剣を止めた。そして俺は空中でゴブリンのリーダーが一瞬止まった瞬間を見逃さずに正確に首をはねた。


 ぐちゃっ ビチャッ


 最後の一匹を仕留めた俺たちは剣を振って血を振り払い、


 「殲滅完了だな。」

 「だね~!」

 ともに気分のもやもやが晴れるのを喜び合った。


 「俺はこっちで討伐証明部位を切り取ってるから桃花は向こうに行ってどんな様子か見てこい。」

 「わかった~。」

 さすがに俺が入るのは憚られたため桃花に代わりに行ってもらった。今回は普通にナイフを出して左耳を刈り取っていく。計32匹いたので今日1日で40匹狩ったことになる。一匹200ルーアなので8000ルーアだ。時間と収入のバランスを考えると余り効率的ではないかもしれない。今気づいたがそろそろ午後になってきているしな。


 「お父さ~ん。」

 桃花が帰ってきた。

 「どうだった?」

 「ちょっと落ち着いたみたい。冒険者でランクと名前、こうなった経緯ぐらいはわかった。」

 「ランクは?」

 「全員Dランクで『戦乙女』ってパーティ。犯されたのがリースって名前でその他がルミとミナって名前。一昨日に採集依頼で少し奥に行ったら襲われたらしいよ。リースはなんか絶望って顔してるけど一応元気。」

 「一昨日? 残りの二人は犯されてなかったとかずいぶんと奇跡的だな。で、格好は?」

 「リースは裸。他は一応着てるけどボロボロ。」

 

 「なるほど......取り合えず俺が来るからこれで体を隠せっって言っといて。」

 nMSで手近な木から繊維を抽出、織り上げた少し厚手のシーツっぽいのを桃花に渡す。少し会って話を聞きたくなった。

 「わかった~。」


 ぼそぼそと何やら会話が聞こえて、


 「終わったから入っていいよ~。」

 桃花の元気な声が帰ってきたので掘っ立て小屋に入ってみた。

 「失礼する。」


 中には2人のそこそこかわいい村娘って感じの子と一人のシーツにくるまってる美少女がいた。

 「こんにちは。これからどうしたい?」

 まあまずは意思の確認だな。




 ......受付嬢と言いこの子たちと言い、どうもこの世界の女性はあまり美人補正がかかっていないらしい。



 


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