装備作成
チリィン
「あーおきゃくさんだ。おかえりなさい!」 宿に戻るとララの笑顔が待っていた。うむ、癒される。
「ただいま。後俺の名前は詩輝、こっちは桃花だ。そう呼んでくれ。」
「シキとトーカね! わかった!」 うんうん素直でよろしい。
「あらあら、シキ君とトーカちゃんね。お帰りなさい。」
そんなことをやっていたら女将が出てきた。なぜか君付けされてしまった、解せぬ。......そういえば名前はなんていうんだ?
「名前をうかがっても?」
「私? エマよ。」 エマっていうらしい。
「そういえば今日の分のご飯は要らないんでよろしく。」
「ええ、わかってるわ。」
「じゃ、もう今日は寝るから明日の朝に御飯ができたら呼んでくれるとありがたい。」
「ララに呼びに行かせるわ。」
「感謝する。」
俺たちは階段を上って部屋に戻った。
「ララちゃん可愛かったね~。ずっと一緒にいたい。」
「そうだな。だが俺たちと違ってララには寿命があって年も取る。寂しいか?」
「......寂しいよ。お父さんみたいにしたいぐらいには。」
......この短時間でこれほどまで感情が人間らしくなるとは......想定外だな。
「まあ、人の命の行き先を決める権利は俺たちにはない。人生と本人の意思で決まることだ。」
......湿っぽい話になってしまったな。
「さ、寝るぞ寝るぞ。そんなことを考えるにはまだ早い。」
「おやすみ」 桃花にそう言って俺は寝た。
「......うんっ! おやすみなさい。お父さん。」
余談になるが、俺たちのnMSAIには人間と同じような機能が多々備わっているので睡眠も娯楽としてとることができる。
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チュンチュン
朝になり小鳥のさえずる声で気持ち良い朝を迎えた俺は、隣のベッドで寝ている桃花に声をかけた。
「お~い桃花、朝だぞ。おきろ~。」
「もうちょっと寝かせて~。」
睡眠に快感を覚えてしまい、なかなか起きようとしない桃花。仕方ないな~
「そうかそうか、じゃあ朝飯になっても起こさないからゆっくり眠ってくれよ。」
がばっ
「ごめんなさい。」
一瞬で起きた。食欲を侮るべからず。
そのうち食いしん坊キャラになるんじゃないか? 可愛ければ問題ないが......。
それからララが起こしに来るまで少し暇だったので装備を適当に冒険者っぽく錬成してみた。
服を普通の村人のに変えて、腰のベルトに通せるポーチを一つ、背中に大剣を背負う用の金具を付けてアダマンタイト複合素材製の大剣......いちいち言うのめんどくさいな......適当に名前を......意外と難しい、かっこいいものにしたいがいかんせん俺の知識には中二的な奴しかない。何々ソードでいいか。不死ソード? なんか語呂がいまいちよくない......不死......イモータル? うんこれでいいやイモータルソードで。......で、靴はコンバットブーツをイメージして底のグリップをよくしてっと。腕は......適当に手甲を付けて指は自由。大剣と装備を真っ黒に統一......うむ、かっこいい。なんか闇っぽい感じが。
桃花も勝手に装備を錬成しているが基本俺をまねて色だけ髪の色にしている。ちなみに大剣の刃渡りは75㎝、両刃で持ち手は25㎝。できる限りバランスよくしていたらこうなった。
こんこん 「しつれいします~!!??」 ちょうどいい頃にララが呼びに来た。俺たちの昨日とは違う装備姿に驚いたようだ。
「大丈夫か?」 固まったララに声をかけると、
「う......うん! シキ、ごはんできたからよんできてってままがいってた!」
「そうかそうか、わかったよ。起こしに来てくれてありがとな。」
笑顔でお礼を言って、
「おい、桃花行くぞ。」
「あいあいさ~」
食堂に下がった俺たちは冒険者たちの好奇と恐怖の視線に出迎えられた。
どうやらここの食堂は冒険者たちの御用達だったらしく先日の惨劇に居合わせた奴もいた。
(ふっ、視線がここまで気持ちいものだと思わなかったな。)
好奇の視線はいま着ている装備を見たか先日の事件を聞いたものだろう。わかりやすい。
「あらあら、大人気ねシキ君。はい、日替わり定食。」
エマさんが相変わらずほんわかとした顔で見当違いのことを言いながら定食の乗ったトレイを持ってきた。さて、異世界飯、美味いかな? まずかったら味覚と嗅覚切って食うか。
今日のメニューはなんかの魔物のステーキとサラダ、大きくてかたい黒パンとスープだった。冒険者用なのか少し量が多い。
さっきここに泊まっているであろう冒険者が黒パンをスープに浸けて食べていたのを見かけたのでそうやって食べる。......うん、やっぱ堅かった。まあ本気を出せばかみ砕けるだろうがたぶん口に刺さってひどい目に合うに違いない。スープは少ししょっぱい味付けだったからそういうのを想定してたんだろう。ステーキも少し筋張っていた。......が、俺たちは人外の強度とパワーを誇る顎でお構いなしに咀嚼、5分で食べ終わった。口に運ぶスピードは普通だったためがっついて食っているようには見えない上品な食い方だ。周りはまだ半分しか食べ終わっていない。......謎の優越感を感じながら俺たちは席を立ち、エマさんに一言言って宿を出た。ちなみに宿の飯は美味かった。腹の中で解析したので帰ったらまた食えるだろう。
そうして朝飯を食べて精神的に満腹になった俺たちは依頼を受けにギルドへ向かった。
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