鍛冶屋
「......美味いか?」
「......。」コクコク
あまりの新感覚に言葉が出ないようだ。一心不乱に食べている。
「ここは鍛冶屋のようだな。......入ってみるか。」
こっちの武器の基準とかいまいちわからないしな。
「こんちわ~」
「こんにちわ~」
「......。」
入ってみたが誰もいない......。
周りを見渡すとピンからキリまで様々な品質の武具が置いてあった。
一応アダマンタイト製の甲冑もあったが一個だけで店の奥にあっただけだ。この世界ではまだ複雑な加工技術が確立していないらしい。所々に魔導式を書き込んで何らかの効果を付与された武具もあったからこの奥にいる職人は付与系スキル所持者なのだろう。しかし俺たちが振るうにはもうちょっと強度が必要だな。......しかしほんとだれも出てこないな......居るよな?
眼球の赤外線感知機能をオンにして壁の向こうを見ると......ああやっぱ壁の向こうにいた。
「だれか~いますか~?」
「......。」
なんか言えよ。まあこういう時は......。スゥ......。
「誰かぁぁぁぁ! 居ますかぁぁぁぁ!」
でかい声を出すに限る。
「うっせぇぇぇぇ!! 邪魔すんなぁぁっ!!」
おお、おいでなすった。やはりおっさんだ。というか最近おっさんしか見ていないような......。
怒声を張り上げながら出てきたのは身長180㎝程の腰の曲がった筋肉だるまだった。
右手にハンマーを持っていたので鍛造専門なのだろう。
なにはともあれ、
「こんにちは。」 まずは挨拶。
「こんにちわ~。」
「お、おう。こんにちわっ......じゃねぇぇぇぇぇ!! 何邪魔してきたんじゃぁぁぁぁぁ!!」
ちっ、流せなかったか。
「悪い悪い。誰も来ないから叫んだだけだ。ところで少し話があるんだが......そんなに怒った顔をしてるとしわ増えるぞ。」
「俺はまだぴちぴちの30歳じゃあぁぁぁぁぁぁ!」意外な事実、発覚。てっきり50歳くらいかと思っていた。
「まあまあ、落ち着けって。ところでこいつを見てどう思う?」 少しサプライズもかねて俺の愛用している先程そこらへんの土から錬成してきたアダマンタイト複合素材製大剣を軽そうに持って渡す。
「ん? どれどれ......うおっ、お゛お゛お゛お゛ぉぉぉ」 ガシャン
予想通り重さに耐えられずに地面に落としてしまったww
「お、お前、どんな馬鹿力をしているんだ......。」 肩で息をしながらそう聞いてくるおっさん。
そろそろ落ち着いたかな?
「それはいったん置いといて......まずは自己紹介と行こうじゃないか。俺は詩輝。こっちのピンクの髪が桃花で今日この王都に来て冒険者になったばかりだ。よろしく。」
「よろしくっ!」
「なんか流されたような気が......まあいい。シキとトーカか。俺はジルド、この王都で鍛冶職人をしている。......ところでなぜなりたての冒険者がただの人間は持てないような重い大剣を片手で軽々と扱える? スキルか?」
「そんなもんだ。」 スキルの効果は全く別物だがな。
「ちなみに......これはアダマンタイトか?」
「そっ」 隠しても意味ないな。分かるやつはわかるし。
「なぜこんなにアダマンタイトが......どこで手に入れた?」 やっぱり聞いてきたか。
「そこは言えないね。企業秘密というやつだ。」
「ぐっ、そうか......。」 意外とあっさり引いた。これが職人の秘伝の技術とかに対する価値観なのかな?
「ところで何をしに来た?」
「顔出し。」
「顔出し?」 訳が分からないという顔だ。異世界の知識でこの世界の標準を見に来たとか言いたくないのだ。許せ。
「まあそういうわけなので今はここでする用事は特にない。またいつか来るかもしれないしそん時はよろしく。」
「またねー!」
「お、おう。またな。」
鍛冶屋から出ると、すっかり外を夕日が赤く照らしていた。異世界の夕日も地球と大差ない。
「宿屋に帰るか......。」 意外と技術は高かったな。やはり古代のスキルホルダーの魂が廻っているのだろう。スキルで魔道具とかも作れているようだし。これなら多少触手を出しても驚かれない。まあ、驚かれたところで迫害されても死刑になってもいったん死んだ風を装って別の顔で生きればいいんだがな。別に不死であれば力を見せつけようが何しようが問題ないのだ。
......これって主人公がヒロインをかばって死ぬ→ヒロインが悲しむ→主人公復活→主人公に依存するヒロイン、みたいなシーンも可能だな。時々ドッキリ込みでシリアスシーン見つけたらやるか。
「お父さんまた変な顔してる......。」 ......考え事をするときは表情筋を固定しておくか。
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