表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/96

受付嬢さん

 


 ギィ......。 

 ギルドの扉が開いた。ここは王都のギルドなので人がたくさん集まる。いつものことなので特に気にしないで「依頼」の受付で長い冒険者さん達の列をさばいていた。


 そんな私の耳に、

 「登録しますか?」

 「ああ、俺たち2人の登録がしたい。」

 

 という会話が聞こえてきた。どうやら冒険者に2人組で登録しにきたらしい。まあでもそこまで珍しくはない光景だ......。


 「確認します......出身地は無記入ですが、そう登録させてもらいますよ?」

 「ああ」

 「うん!」

 ......ん? 出身地が無記入? 珍しい。今まではそういうことはなかったのに......何か事情でもあるのかしら? そう思ったら今度は同僚が先程の二人に冒険者の規則の説明をし始めた。あれ、長いのよね、私もやったことがあるけど結構のどが渇いて大変だった。


 同僚の話が終わって、例の二人がFランクの薬草摘みの依頼書をもってこっちに並んできた。視線をそっちにやったが、フードを深くかぶっていてよく顔は見えなかったので、また目の前の冒険者の応対を始めた。


 「こちらが報酬金です、ご苦労さまで......。」 ガッ「いてえじゃねえか!」


 突然荒々しい怒鳴り声が上がった。驚いてそっちを見るとこのギルドで有名な荒くれものの、Cランク冒険者、バートさんがいた。何か先程の二組の冒険者に向かって怒鳴り散らしています。新人潰しのようです。こちらとしては優秀な人材が離れていくのでやめてほしいですけど、ギルドはいざこざに干渉できないので、歯がゆい思いをしています。おまけにその付近で酒盛りをしていた冒険者達がそっちを見てにやにやしている。とても不愉快です。


 「痛いんですかぁそうですかぁ~大変ですねぇ~」

 ......と、何やら例の冒険者さんがあおり始めた。あまりの非常識な行動に私たちはもちろん、冒険者さん達も固まってしまいました。

 そして怒ったバートさんが手を振り上げた。そのあとに起きるであろう惨状を想像して私たちは目をつぶった。



 バキンッ 「ぐっ、あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ」 ドンッ「「グエッ」」 ガシャンッ


 悲鳴が聞こえたのでびっくりして目を開けた瞬間、予想道理の酷い光景が目に飛び込んできました。

 ......立場が逆転していることを除いて、ですが。


 殴りかかる方だったはずのバートさんが後ろで酒盛りをしていた冒険者のテーブルをひしゃげさせながら腕を血まみれにして倒れていて、殴られる方だったはずの例の二人組は平然としていたのです。視界に少しだけ入った口元に浮かぶ笑みに、私の感情はすっかり恐怖で塗りつぶされてしまいました。



 しばらくあまりの出来事に誰も動きませんでしたが、例の二人組の冒険者のうち片方がおもむろにテーブルに近寄り、


 ズルズルズルズル......ポイ、ドサッ


 バートさんを酒場の隅に片手で引きずっていき、そこらへんにごみを捨てるような手つきで軽く投げてしまいました。あの巨体をあんな細身で......と思っていたら今度はひしゃげたテーブルに手をかけて、


 ......ミシッ、ドサッドサッドサッ


 元に戻した後バートさんの下敷きになって泡を吹いている冒険者さん達を無造作に椅子に座らせてしまいました。


 そして何やら満足そうに首を縦に振って、

 


 ......依頼書片手にこっちに歩いてきました。視界の先に同僚の憐みの視線を感じます......そこで見ていないで何とかしてくださいよぅ。


 現実逃避をしていた短い間にこちらに来た二人組は何やら考えるそぶりをした後、背の高い方がおもむろにフードをとって存外きれいな顔に笑みを浮かべながら話しかけてきました。


 ......後であれはただの笑みだったと気付きましたが、そんな余裕のない私には先程の惨状もあいまって恐怖しか感じられず、


 「......ヒィッ。」 情けない悲鳴を上げてしまいました。

 「大丈夫か?」 心配してくれたようですが、先程の惨劇がフラッシュバックしてしまい、つい......

 「な、殴らないで......。」 とんちんかんなことを言ってしまいました。うう、恥ずかしい......。

 「別に殴るつもりは皆無なのだが......。ただ依頼を受ける手続きをしに来ただけだ。というより早くしてくれないか。」


 その言葉に正気に戻った私はいつも道理の応対を......


 「......はっはい! この依頼を受けるんですね、わかりました! 依頼内容は薬草を30本以上の採集で増えた分報酬は増額されます! 頑張ってください!」 しようとしましたが普通に緊張してつい早口になってしまいました。うう、お給料減らされちゃうかもしれません......。そういえばカードを見てわかったんですが、この人、シキさんというらしいです。


 「じゃ、行きますか。」

 「......うん!」

 のんきな口調で話してギルドの外に行ってしまいました。今までの緊張を返してください!!


 すっかり疲れてしまった私は同僚の気遣いもあり、少しギルド職員用の休憩室で休憩をとらせてもらえました。



 ......少したって回復した私は、また受付嬢の業務を始めました。今度は普痛の人達で特に問題も起きず、普通にやれていました。酒場の隅にやられたバートさんは相変わらずそのままです。優秀でギルドに貢献している人でなければギルドは何もしないのです。


 「はぁ......。」ギィ......。てくてく

 とりあえず冒険者さん達の応対がひと段落付き、緊張を解いていたところにまた誰か来ました。誰かな? と顔を上げると、

 「依頼達成してきた。」 例の二人組がいた。

 「はっ?」 つい気の抜けた声が出てしまいました。なんで? もう終わったの? 30本とるだけにしても早すぎます。普通どんな熟練者でもさっき行ったら夕方まで帰ってこないはず......。

 「......なんでこんなに早く大量に丁寧に採ってこれるんですか?」 怪しい、怪しすぎる。


 「......適当に群生していたので桃花と手分けして取ってきた。」 やっぱ怪しい。

 「ふつうこんなに群生しないんですが......。」 問い詰めようとしたら、


 「何か問題でも?」 笑顔でごり押してきました。そしたらあの惨状が目に浮かび、かわいそうなことに恐怖に負けた私には薬草を数えて報酬金を渡すこと以外何もできませんでした。

 「......全部で7000ルーアです。どうぞ。」 微妙な顔をした私が報酬金を渡すと、シキさんが少しカウンターに身を乗り出してきたので身構えると、

 

 「手段は言わないがやましいことはしていない、安心しろ。」 

 「えっ」 とうとつ過ぎて何を言っているのか理解が......。

 「ところでおすすめの宿はあるか?」 

 「えっとさっき......。」 

 「おすすめはありますか?」 また笑顔でごり押してきた。今度こそは......

 「いえ、さっき......。」

 「おすすめは?」

 「いえ......。」 やっぱ怖いです。

 「おすすめは?」

 「......では、ギルドを出て左にまっすぐ行くと2階建ての小鳥亭という宿屋がおすすめです。......決して騒ぎを起こさないように。」 一応釘はさして置く。


 「そんなに危険物扱いしないでくれよ......桃花、いくよ。」 連れの人はトーカというらしい

 「それはお父さんがあんな事をしたからだよ?」 結構かわいい子じゃ......? お父さん?

 「お父さん......?」 この人そういう趣味が......?

 「こいつの親をやっているだけだ、気にするな。」 一応違うらしいです。......が、

 「変なことはしてませんよね......?」 やっぱり気になります。

 「断じてしていない。」 バッサリ否定されました。


 「じゃあな。」

 「またね~バイバイ」 いろいろやっておいて嵐のように去ってしまった。


 ......どうやら少しは打ち解けられたらしいですが......なんか休んだはずなのにすごい疲れました。

 「大丈夫だった?」 同僚のやさしさが心にしみる......。


 しかしそんな私は今後似たような光景をたびたび見ることになるとは思いもしませんでした......。




 

面白かったらブックマークと評価、お願いします。その他誤字脱字、意見があったら教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ