報告
......どうやらエルオス王国王都付近に飛ばしたクリーチャーシリーズが行動を開始したようだ。
何故そのまま俺が行って冒険者デビューしないかというと、エヴァにもらった一般常識はあくまでこの世界一般での常識であり、文化の違いとか、現在の統治者の性格とかが含まれていない。なのでちょっとした違和感でも不審に思われる場面が出てくるはずだ。そんなときクリーチャーシリーズであれば顔を変えて登録しなおせば、もはや別人。先程までの人物はいなくなるので事前の情報収集には便利なのだ。......ん? 俺でもできるって? バカ言うな。俺は結構念入りに作り上げたこの外見を気に入ってるから変えたくないんだよ。
「で、どうなったんだ?」
『どうやら王都に初めて入るためには身分証明書か通行料が必要らしく、現在は人が多数並んでいるため時間の無駄と判断、そのまま人気のない場所で空気に擬態、そのまま素通りしたそうです。』
(へえ、この世界でも身分証明書か通行料が必要だと。シンプルでいいね。)
「じゃあそのまま適当な人に声をかけて冒険者ギルドの場所を特定、いろいろ聞いてついでに冒険者登録をさせてみてくれ。」
『了解』
「あと適当なやつをもう一体城の中に落として空気にまぎれて城の情報収集を。会話内容から重要人物の性格の予測も立てといてくれ。」
『了解』
「じゃあまた何かあったら報告頼む。......桃花、続きを再開だ。」
そして俺たちはまた模擬戦を再開した。そうそう、武装系のコントロールはさっきから試験場の隅っこでクリーチャーシリーズの一体に反復させ、その結果を反映するという風に最適化を並行してやっているので、おそらく対外的にメインとなるだろう剣技を今は重点的にやっている。
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「やぁっ!」桃花の気合の入った声と共に俺に向かってアダマンタイト主体の超重量大剣が振るわれる。
ガインッ その一撃を火花を散らせながら大剣ではじき返し、筋力で慣性を押し殺しながら腰をめがけて横なぎにふるう。
......と思わせつつ有り余る腕力で斜め下に軌道を変え、桃花の右足を切り落として地面に突き刺さる。
「も~痛いじゃない!」と愚痴を言いながら片足で横に飛びつつ体内の疑似血管からnMSの糸を伸ばし、切り落とされた右足と接続してひきよせ即座に修復する桃花。
そのすきを見逃さず、即座に俺は桃花の胴体を目掛け斜めに音速を越えた速度で剣をふるう。
ズパンッ 桃花の胴体が斜めに切り離され、この試合は終わった。
......ちなみに模擬戦の勝敗は相手に再生が10秒以上掛かるけがを負わせることのみで決まるうえ、やっているのが人外の肉体とスピード、膂力を持つ2人なので、たいてい一試合一時間ぐらいかかる。
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「もお~お父さんももうちょと手加減してくれてもいいのに~」今までで165試合中24勝141敗の桃花は不満顔でそういった。
「最後にけがを負って感情の高ぶるお前が悪い。まあそれでも上達しているが......。」人外と化した俺の剣技はnMSAIの高効率な強化学習により凄まじいスピードで上達した。それに対し、そもそもnMSAIを持って生まれた桃花の上達が遅いのが気になるが......まあいいだろう。
......そう思いなおした詩輝は再び桃花を相手に模擬戦をするのであった。
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