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あくまでも個人的な、心情による

作者: 葵陽

お読みいただければ、幸いです。

わたしの仕えている(あるじ)は、神様と話ができる。

『できる』、らしい。



カリカリ、とミルクチョコレートをひとかけかじった。口内にとろりとした甘みが広がる。至福の時間だ。

だのにわたしの部下たちは、いつもカカオのパーセンテージが高いものばかり差し入れてくるものだからほとほと困る。"チョコレート好き"という情報は知っているのに、何故なのだろうと。どうやら彼らのイメージ的にわたしは、甘いものを好まないと思われているよう。休憩室ではブラックコーヒーを、酒とくれば苦いビールをいのいちに渡されるものだから本当に困っている。

わたしとて年頃の女性(にょしょう)ゆえに、甘いものは好むのだ、当然に。




さて実のところわたしは、神というものを信じていない。

仕えている主が神に仕えている、のであれば必然わたしも神に仕えている立場となるのだろう。そんなわたしが、『神などいない』と公言するわけにもいかない。


生憎とわたしは、神から何物か授かったことはないし神の声も姿も見たことはない。奇跡を見せてもらったこともない。

かといって、仕えている主が『嘘つき』であるとも思ってはいない、思いたくない。



別段、神を信心している者たちを嘲る意図もなければ、排除しようという意図もない。

わたしの主が其れを望まない限りは。


わたし個人が、ただただ神を信じていないという話だ。




わたしが休憩室から出ると、目を開いているのか閉じているのか分からない顔の、奴と出くわした。わたしはつい、「げっ」と言葉に出してしまう。

彼方には聞こえてしまっただろうか。

まったくの偏見になるが、糸目の輩は何を考えているのか分からないから苦手だ。



「これはこれは。三島近衛長、ご機嫌麗しく。ご休憩ですか。」

話しかけてきたのは、糸目の方だった。

先程の言葉は聞こえていないようだ。


「え、ああ。陛下が御内務中ですので、少し遅めの昼食を、と。」


「そうでしたか、それはちょうど良い。僕も同席しても構いませんか。」


「ええ、それはもちろん・・・」

「今日の食堂、日替わりは鯖の味噌煮にプリンが付いていましてな。」


プリン、とわたしの耳が音を拾った。実際には出来ないので、心の中でガッツポーズをするわたし。


「僕の小鉢と近衛長のプリン、交換してくれません?

僕、食堂のプリンに目がなくて。」

照れたようにニヘラと笑う、その男の顔を殴りたくなったわたしは多分、悪くない。


突き出しそうになる右手を仕舞いこみ、出来るだけ困った表情となるように眉を動かす。


「申し訳ないが、体調が優れませぬゆえ自室に下がります。昼食は、部下に運ばせますのでこれにて失礼いたします。」


「あ、そうですか。体調の件は僕が言っておきますよ。お大事に。」

そう言った奴の表情は、心なしか残念そうには見えず。


糸目の輩は、嫌いだ。

お読みいただきまして、ありがとうございます。

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