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under ground  作者: 七瀬
プロローグ
6/38

6

 不思議な夢を見た。

 俺は真っ白な空間に立っていた。そこには何も無かった。誰も居なかった。俺1人だけだ。物音もしない。完全な静寂が辺りを包む。

 ここは何処だ。少なくとも佐久良町ではない。そもそもこれは現実か?いや、多分夢なのだろうが、些かリアル過ぎる様な気がする。

 取り敢えず壁なのかは分からないが、それらしき物に触れてみる。掌に冷たい感触が返ってくる。なるほど、壁はあるのか。

 という事は閉鎖された空間で間違いはないって事だな。

 前方を見てみる。白い空間が延々と続いている。出口は見えない。

 進むべきか否か。暫し悩む。

「よし……」

 ゆっくりと一歩を踏み出す。

 

 暫く歩いてみたが景色に変化は無い。特に何か起きる訳でも無く、只々無機質な空間を歩いているだけだ。

 面白くも無いし、此処から出たいなぁ……早く目覚めないかなぁと思い始めた頃に【それ】は現れた。

「なんだこれ?」

 黒。黒一色に染まった丸い物体が、俺の目の前に浮いていた。動いてはいない。

 果たして触って良いものか。好奇心には逆らえないが、得体の知れない物体に触るのは幾ら夢の中でもちょっと気が引ける。

 そっと手を近付けて触れようとしたその時、物体が渦を巻き、カーテンの様に大きく広がる。闇の幕が現れる。

 そしてその闇の幕は俺を呑み込もうと更に広がるー

 というところで目を覚ましたのだ。

 時計を見ると6時を指している。アラームは7時にセットしていたが、起きてしまったのでベッドから出る。

 気持ちの良い朝とはいかなかったが、今日も楽しく過ごそう。


 真衣子と一緒に登校し、HR開始まで話をする。勿論話題は今朝見た夢だ。

「夢?どんな夢見たの?」

「それがな、なんか白い空間に居たんだよ」

「もうちょっと具体的に」

 俺はあの夢を思い出しながら、真衣子に伝える。真衣子は黙って聞いていたが、話し終わると同時に、

「夢は所詮夢だからねー。現実じゃあり得ないって」

「それは俺も分かってるよ。でも凄く現実味があったんだ」

「まぁ、面白い夢ではあるけど」

 2人して無言になる。と、廊下を誰かが走る音が聞こえた。軽快な走り、ではなく何かから逃げている様な足音だ。

 そいつは教室に駆け込み、俺達の席の近くまでやってきた。

「明美?」

 そいつの正体は明美だったのだが、一体どうしたのだろう。

 滅茶苦茶汗掻いてるし……

「はぁっ……はぁっ……!お、おはよう、2人共」

「お、おう」

「おはよう……どうしたの?」

 息を切らしながら挨拶をする明美にちょっと引き気味の真衣子と俺。明美は深呼吸をして、自分の席に座る。

「……昇降口で、視線を感じてね。ずっと纏わり付いて来たから怖くなってさ。思わず全速力で走ったの」

「視線……」

 俺と真衣子も昨日その視線を昇降口で感じている。あの時は誰も居なかったが……

「誰か居なかった?」

「それらしき人は見てないよ」

 明美も視線の主を見てはいないらしい。入学してからまだ2日目だが、何処となく不穏な空気が漂っていた。


 HRと健康診断を終え、俺は真衣子の用事に付き合っていた。

 近くのショッピングモールでの買い物、それと荷物持ちである。

 真衣子の親が佐久良町内でレストランを経営している為、食材やら料理用品やらが必要になるのだ。

 勿論消費量がとんでもないので、定期的に買い込まなければならないという。真衣子1人では持ち帰れない量なので、度々俺も借り出されるのだ。

 今回もまた随分と買うなぁと思いながらベンチに座る。

 基本的には真衣子が全部購入するので、その間はやる事が無い。ただ荷物番をするだけだ。

「……」

 いや、それにしても暇だ。暇過ぎて寝てしまいそうだが、荷物を盗られたりしたらマズい。しっかりと役目は果たさなければならない。

「ちょっと、横いいかな?」

「……どうぞ」

 ふと、男に声を掛けられる。

(ベンチは幾らでもあるのにわざわざ此処に座らなくてもいいだろ……)

 俺のパーソナルスペースに真衣子と明美以外が入って来るのは気に食わない。気に食わないが、争いは生みたくないので、取り敢えず了承した。

 そいつは灰色がかった髪をしていて、落ち着いた雰囲気を纏っていた。

(ん……?こいつの制服……)

 俺が着ているものと同じ制服を着ている。という事はだ。

「お前、私立佐久良高の生徒か?」

「……そうだよ。君も、だよね?」

「クラスは?」

「1-Aだよ。君は?」

「俺は1-Bだ」

「修平!」

 こいつと話している場合では無くなった。真衣子が買い物を終えた。

 荷物を持つ。

「あそこに居るのは、友達かい?」

「ああ。もう行くわ」

 ベンチに座る男に声を掛け、真衣子の元に向かう。

 数歩歩いた背中に投げかけられたのは、

「じゃあ、また学校で。葉山修平君」

 そんな言葉だった。

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