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under ground  作者: 七瀬
第3章・2つのセカイ
36/38

3話・一手

「どうしたのよ……」

 昼休み。弁当をつつきながら今朝の美鈴の様子を思い返していた。少なくとも俺の記憶している2年間の間ではあんな美鈴は見た事が無い。

「修平……?」

「あっ……悪い」

 真衣子に話し掛けられていたのに気が付かなかった。それ程までに考え込んでしまうとは。

「何かあったの?」

「いや……」

 今はフェリアを見つけ出す事に集中しよう。美鈴の件は後でも良い。それと一ノ宮先輩に聞きたい事がある。

「フェリアさんの居場所は分かりそう?」

「検討も付かない。佐久良には居る筈だけど、正直手詰まりだな」

 見つけ出すとは言ったものの、結局のところは手掛かりが無い訳で。絵梨奈辺りにも話をしておくべきだろう。

「キルシュバウムは大丈夫なの?」

「そっちも正直危ういんだよなぁ……」

 ロベルトがいつまで持ち堪えてくれるか、華蓮だったモノがいつ動き出すかにも寄る。

「一度色々整理した方が良さそうね。放課後、喫茶店に集まりましょう」

「そうしたいとこなんだが、一ノ宮先輩に聞きたい事があってな」

「じゃあ、一ノ宮先輩も喫茶店に連れて行きましょ」

「まぁ、それでも良いか」

 取り敢えずは、放課後。これまでの状況と情報の整理をする事になった。


「仕事残ってんのに連れ出すなよ。また篠宮にグチグチ言われんだから」

「どうせ仕事しないんだから良いでしょ」

「修平よぉ。今のはちょっとイラっと来たぜ?俺だってやる時はやる男なー」

「はいはい。後にしてくださいね。何の為に集まったか分かってますよね?」

 一ノ宮先輩を生徒会室から無理矢理連れ出し喫茶店にやって来た。仕事があるとか何とか喚いていたが、まぁそれは後で頑張って貰うとしてだ。

「一ノ宮先輩には話していなかったので、全部話しますね。俺が体験した事を」

 全部とは言ったが、華蓮の事だけは話すのを避けた。

「……」

 絶句である。まぁ、無理もないだろう。いきなり異世界だとか魔術だとか訳の分からない話をされれば、誰だって唖然とする。

「俺が居ない間の佐久良の状況は?」

「黒い柱を幾つか観測しました。それと、どうやら佐久良町の外には出られない様です」

「出られない……?」

「隣町に行こうとしたんだけど、見えない壁に阻まれたんだ」

 そう話す神崎は怪訝な顔をしている。

「いつからだ?」

「修平さんが居なくなってからです」

 俺がキルシュバウムに転移したタイミングか。作為的な物を感じるが、佐久良町から出られないという事はつまり。

「ロズウェルは佐久良町内に居るって言葉だ。奴は佐久良町を隔離したんだ」

「隔離した理由は?」

「それは分からないですけど……」

「万が一佐久良町に居たとしてもだ。何処に居るかも分からないんだろ?当てはあるのか?」

 一ノ宮先輩の指摘はもっともだ。佐久良町を虱潰しに探すというのは時間の無駄だ。何かしらの手立てを考えねばならない。

「絵梨奈、お前の力で何か見つけられないか?」

「私の力は事象を感知出来るだけですから……」

「あー、そうか。人は無理かぁ」

 絵梨奈の力は事象限定の感知能力。神崎は瞬間移動。真衣子、明美、一ノ宮先輩は力を持っていない。俺は……佐久良町で使えるかは分からないが魔術。力に頼るべきか否か。

「役に立てなくて申し訳ありません……」

「謝る必要は無いよ。僕が何とかしてみせよう」

 神崎はそう言って、何も無い空間に手を翳す。すると、青い球体が現れた。フワフワと浮いている。一体これが何だと言うのか。

「何だこれ」

「まぁ、見ててよ」

 青い球体が光を放つ。形が変わっていく。いや、形だけではない。大きくなっている。青い球体は数秒でスクリーンの様になった。


「うん。上手くいったね」

 満足気な顔をしている神崎に腹を立てながらも、スクリーンを見る。

 其処には、床に座り込んでいるフェリアが映っていた。部屋に閉じ込められている様だ。

 青い光が明滅している。

「間違いない。フェリアだ」

「外傷も無さそうだし、無事の様だね。それか分かれば充分」

 次にスクリーンに映し出されたのは、とある建物だった。

「病院……」

 頭に軽い痛みが走る。以前にも痛む事があった。あれは確か入学式で一ノ宮貴文という名前を聞いた時だったか。

 この病院には覚えがある。2年前、事故の直後に運び込まれたのがこの病院だった。

「佐久良西病院か。僕も行った事はあるけど……こんな部屋あったかな」

「記憶には無いけど……あけみんは?」

「あたしも知らない」

 勿論俺にもそんな記憶は無い。あの病院にはあんな部屋など無かった筈だ。

 考え込んでいる間に異変が起きる。突然、ノイズが走り映像が途絶えたのだ。

「勘付かれたか……まぁ、居場所が分かっただけ良しとしよう」

「……」

(真衣子……?)

 まただ。真衣子がまた一ノ宮先輩を一瞬睨んだ。鋭い視線だ。明らかにいつもの真衣子では無い。やはり何かがー

「とにかくだ。佐久良西病院。此処が目的地って事で良いんだな?」

 当の本人は気にする様子も無く、神崎に話し掛けている。それを見て真衣子もいつもの雰囲気に戻る。

「そういう事になるでしょうね」

「じゃあ早速向かおう、と言いたいとこだけど大人数だと不審に思われそうだ」

 確かにそうだろう。少人数で向かった方が良さそうだ。

「俺と真衣子と神崎で病院に向かおう。一ノ宮先輩と絵梨奈と明美は此処で待っていてくれ」

「まぁ、神崎みたいな力は持ってねぇしな。大人しく留守番だ」

「お気を付けて」

「待ってるよ。ちゃんと帰って来てね」

 手は打った。フェリアを助け出せるかどうか。まだ不確定ではある。だが、助け出さなければ、キルシュバウムへ連れ帰らなければならない。

 そう約束したからだ。


「着いたな」

「……明かり点いてないけど」

「休診日、という訳では無さそうだね」

 休診日は日曜日と祝日だけだ。今日は平日だし、まだ夕方だ。病院が開いてない筈は無いのだが。

「とにかく入ってみない事には始まらない。行くぞ」

「そうするしかないね」

 病院の入り口に近付く。自動ドアが開いた。明かりは消えている。物音すらしない。

「……廃病院かよ」

「罠だったりして」

「無いとも言い切れないね」

「何笑ってんだよ」

 ゆっくりと病院内を進む。暗い事は暗いが、外がまだ明るい。そのお陰で地下へと続く階段は直ぐに見つかった。

 真っ暗で何も見えない。この下は外の明かりすらも届かない場所だ。

「……神崎、何かないのか」

「明かりならあるよ」

 手に持っていたのは佐久良西病院のラベルが貼られた懐中電灯だった。

「お前さぁ……」

「ちゃんと戻しておくよ。さて、この下にあの部屋がある筈だ」

「行きましょう」

 微かな光を頼りに俺たちは階下へと歩みを進めた。


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