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under ground  作者: 七瀬
第3章・2つのセカイ
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1話・佐久良町へ

 ロズウェルとフェリアは佐久良町にいる。確信は無い。だが、戻らなければならない。

 屋敷へ走る。華蓮の部屋に転移できる様にした扉がある。そこから佐久良町に帰るのだ。

「おい少年!」

 背後からロベルトの声が響くが、無視する。王都を出て、森を抜ける。

 その先には、屋敷がー

「……は?」

 跡形も無くなっていた。先程までは半分はまだ残っていたというのに。

 崩れた瓦礫すらも見当たらない。

 フラフラと足を進める。

 これじゃあ、転移できないじゃないか。

 どうやって戻れば……

「少年!それ以上近付くな!」

「え?」

 目の前に黒い何かが立っていた。

 佐久良町に現れた黒い球体を思い出した。

 だが、それは球体では無い。

 紛れもなく人間の形をしていて、真っ黒いパーカーを羽織っていた。見覚えのある顔立ちをしていた。ただ、全身が黒に染まっているだけで、それは一ノ宮華蓮の姿だった。

「……華、蓮?」

 だが、ロベルトが言っていた。華蓮は華蓮じゃなくなっていると。

 だったら、何だ?

「……ロズウェルの野郎、とんでもねぇ事しやがる」

 隣に立つロベルトが下唇を噛みながら呟く。その視線は華蓮だったモノに注がれている。

「大規模魔術の構成要素にされてるってさっき言ったよな?禁呪の類だ。カレンの身体を媒介にしてこの世ならざるモノを呼び寄せている最中だ」

「この世ならざるモノって……?」

「さぁな。生まれてこの方見た事ねぇよ。ただ1つ言えるのは、アレが目を覚ましたらキルシュバウムどころかガルシア大陸が滅びるって事だな」

 目の前に立つ、外見上は俺たちと変わらないモノに世界が壊されるというのか。

 そんな事が許されていいのか。

 俺が取るべき行動は、1つだけ。

「……ロベルト、俺は佐久良に戻る」

「さく……あ?何だって?」

 聞き返してくるが俺は続ける。

「キルシュバウムの果てに穴があるってアドルフが言ってたよな。あの穴は開いたままか?」

「あ、あぁ……アドルフが言うには普通の転移とは違うみたいだ。穴というよりは空間の裂け目だと。塞がらないだろうって見立てだ。それに場所も把握したそうだ」

 それが分かれば充分だ。

 ただ懸念すべきは……やはり、目の前に佇むモノだ。

「こいつ、ほっとくのは不味いか?」

「まぁ、不味いだろうな」

「そうか……」

「時間稼ぎ位だったら出来るぞ?」

 時間稼ぎ。

 俺がロズウェルとフェリアを見つけ出し、全てを終わらせるまでの間。

 此処で俺に出来る事は無い。

 なら、

「……頼んでいいか?」

 ロベルトは少し黙った。

 無理なお願いをしてしまい、申し訳なく思う。

「……嬢ちゃんを連れ戻して来い」

「あぁ、必ず連れ戻して来る」

 お互いに拳をぶつけ合う。

 それを最後に俺は王都の隠れ家に向かう。アドルフに裂け目のある場所に連れて行って貰うのだ。

 急がなければー!


 全力で走って隠れ家に戻って来た。辺りは暗くなり始めていたので不安だったが何とかなった。

「はぁ……はぁ、アドルフ!」

 呼び掛けに緑色のローブを着た少年が応じる。

「どうしました?シュウさん」

「キルシュバウムの果てにある裂け目まで連れて行ってくれないか?」

「分かりました。少々、お待ちを」

 そう言うと奥に引っ込んで行く。

 準備がいるのだろう。ここは待つしかない。

 すると、サリーが話し掛けてきた。

「ロズウェルもフェリアも居ないんじゃ、飛んだ無駄足だったね」

「まんまと出し抜かれたんだ。仕方ない。そういえば、エレナさんとバートリーは?」

 確か隠れ家に向かっていた筈だが、姿が見えない。

「部屋にいるよ。そっとしておいてあげた方が良いかも」

「お待たせしました!」

「ん?何だその石は?」

 アドルフが持っているのは、魔石より一回り大きな石だ。煌々とした赤色を帯びている。

「召喚石です。これで飛竜を喚び出します」

 竜って、あの竜だよな?

「ご想像通りです。さぁ、外へ」

 言われるがまま、隠れ家を出る。

「少し離れていて下さい。喚び出しますから」

 アドルフは召喚石を左手に持ち、右手をその前に翳す。

「我の声に応え……赤き飛竜よ、顕現せよ!」

 召喚石が光を放つ。凄まじい轟音と共に一陣の風が渦を巻き吹き荒れ、地面が揺れ、土埃が舞う。

 謂わばそれは竜巻だった。

 吹き飛ばされそうになりながらも俺は赤き飛竜の姿を垣間見る。

 咆哮が轟く。思わず耳を塞ぐ。ビリビリと振動が伝わる。

 やがてそれも収まる。

 静寂の中、獰猛な目を光らせ佇む飛竜の姿があった。

「さあ、乗って下さい。夜ですが、何とかなるでしょう」

「……は?」

 喰い殺しそうな顔をしてらっしゃる飛竜に乗れと?

 ていうか何処に?

「首に手綱があるでしょう?彼処に乗るんですよ。大丈夫、安全は保証しますよ」

「……」

 乗らないと佐久良には戻れない。背に腹は変えられない。

 覚悟を決めて、飛竜の身体に乗り、首まで這いながら移動し、手綱を握る。

 飛竜は空高く舞い上がり、翼をはためかせた。

「しっかり掴まっていて下さいね」

 とアドルフが言うやいなや、飛竜は唸りを上げてー

「うわあああああああああああああああああああぁぁぁぁ!!……」

 キルシュバウムの空を、風を切る様に飛んで行くのだった。


 ものの数秒でキルシュバウムの果てに辿り着いた。

 とんでもない速さだ。恐怖で身体中が震えている。

 今も傍で俺に視線を向けている飛竜を尻目に、裂け目へと歩を進める。

 そういえば、アドルフ達はこの裂け目に触れたりはするのだろうか。

 もし触れて、更には転移も出来るのならば皆を連れて佐久良へ戻りたいが。

「アドルフ、裂け目に触ってみてくれないか?」

「え?あ、はい」

 そっと腕を近付ける。裂け目の向こうにはぼんやりと木々が見える。佐久良の裏山だろう。

「あー……干渉は出来ないみたいです」

 アドルフの腕は裂け目の入り口に入っていかなかった。無理矢理に入れようとしても押し出されてしまうらしい。

 因みに俺が入れてみるとすんなり入った。

「何らかの抑止力が働いているのでしょう。ともかくフェリアさんを連れ戻せるのは、貴方しかいません。お気を付けて」

「おう。ありがとな。行ってくる」

 アドルフに軽く手を振り、俺は裂け目に飛び込んだ。

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