幕間・とあるセカイのとある会話
「……ん」
身体の痛みで目を覚ました。どうやら意識を失っていたらしい。椅子に座らされていた様だ。
「よぉ、漸くお目覚めか」
男の声だった。心に入り込んでくるかの様な、そんな声。
男は椅子に座っている。短髪で、背はかなり高い。肉弾戦では私に勝ち目はないだろう。相当鍛えている様に見える。
「……ここは?」
私はその男に問う。此処は何処なのか。
「キルシュバウム、では無いとだけ言っておく。詳しく話してもいいが、理解出来ねぇだろうしな」
ぶっきらぼうな態度だ。そもそもこの男は誰なのだろう。
シュウが着ていた様な服を着ているから、多分歳はシュウとそう変わらない筈。
「貴方は、誰?」
男はニヤリと笑い、私の正面に立つ。
「お前らが探していた……ロズウェルだと言ったら?」
「……!?」
頭が真っ白になった。
目の前に居る、この男が、
お爺様やキルシュバウムの皆を処刑した王だというのか。
こいつが……!
「自己紹介も終えたし、そろそろ本題に入らせて貰おうか」
ロズウェルが後ろを向いた。
その瞬間を、私は狙っていた。
最大火力の魔術を叩き付けてやる。それで終わりだ。
いつもの様に、ゲートを開き魔力を流そうとした。
「……え?」
だが、魔力が流れて来ない。ゲートが開く感覚が無い。
「あー、そういえば言ってなかったわ。魔力の供給は封じてある。まぁ、死ぬこたぁねぇから安心しろ」
ロズウェルは笑っている。その姿が堪らなく憎い。
でも、私1人ではどうする事も出来ない。
「俺はキルシュバウムという国を統治している王だが、より良い国にする為には反乱分子は根絶やしにしとかなきゃなんねぇ。邪魔だからな」
何かを操作しながら、ロズウェルは誰にともなく語りかける。
「だから、あの愚王を処刑した。それから俺に仇なす哀れな民も処刑した。それでも未だに抗おうとする輩がいる」
「……私のお爺様は愚王じゃない。貴方より優れた王だったわ」
抑えきれない怒りの感情が私の中で渦巻いている。今すぐにでもこのロズウェルという男を殺してやりたいと思った。
「今の発言、取り消しなさい!!」
怒りに任せて立ち上がる。
ロズウェルは私を冷たい目で一瞥し、
「くだらねぇな」
と吐き捨てた。
「そんなこたぁどうでもいい、俺の目的に比べればな。俺が目指すのは新たな世界の創生だ。キルシュバウムを統治するのはその計画の第1段階でな。まぁ、それはまだ完遂されていないが……」
一体何を言っているのか、全く理解が出来ない。
新たな世界?創生?計画?
「とにかくだ。これを見ろ」
そう言い、ロズウェルが指し示したのは青い光によって映し出されたガルシア大陸だった。
「……ガルシア大陸」
どういう原理になっているのかは分からないが、とにかく目の前にガルシア大陸全土が映し出されている。
「そう。これはガルシア大陸を俯瞰した映像だ。全てを見渡せる」
映像が切り替わる。キルシュバウム王国、その王都中心部へと。
「お前らは俺がキルシュバウム王国内に居ると考えている様だが……幾ら探しても見つからねぇぜ?そしてそれを伝える事も……」
ロズウェルが私に向かい手を翳す。
「出来ない」
「……!?」
衝撃。床に倒れたのに後から気付いた。身体は動かない。
「……私を、どうする気?」
「んー?別にどうもしねぇよ。お前には世界が壊れるのを黙って見て貰うだけだ。お前もこんな国は壊れるべきだと思ってんだろ?」
違う。私は一から新たなキルシュバウム王国を創り直す為にこの国を壊さなければと思ったのだ。
「キルシュバウム王国は消させない。消えるべきはロズウェル、貴方だけよ」
「あー、そうですかい。まぁ、消すのはまだ先だ。さぁて……愉しませて貰おうかねぇ……精々足掻いて見せろよ?なぁ、修平」
ロズウェルの瞳は、画面に映る一人の少年・シュウに注がれていた。




