幕間
修平が消えた。神崎君からそう伝えられたのは、生徒会の仕事を終え、帰宅した直後だった。神崎君が言うには修平の後を尾けていたら隣町との境の踏切の辺りで忽然と姿を消したらしい。
「消えたって、まさか」
『そのまさかだろうね。彼はアンダーグラウンドに呑み込まれたんだろう』
「じゃあ修平は……」
『故意に呑み込まれたか、自分の意思であちらに行ったのかは僕の預かり知るところではないけど、どちらの可能性も考えられるんだよね。彼は執着していたから……』
「どの道修平はアンダーグラウンドにいるって事よね」
呑み込まれたにしても自分から飛び込んだにしても……あれだけ忠告をしたのに。
(やっぱり……あの頃とは違うんだね……)
事故に遭ってから修平は変わったと思う。以前は私から片時も離れず、依存していたのに。
『彼が無事な事を祈ろう』
「そう、ね」
帰ってきたら1発殴ろうと決めた。そうでもしないと修平は止まらないから。
『明美さんは?』
「部活よ。もう終わってる筈。修平の件は私から伝えておくから」
『分かった』
私達はこれからどうすれば良いのだろう。異世界に飛び込むのはリスクが高すぎるから避けたい。
だとするとそれ以外にはー
(信じて……待つしかないのかな)
その選択肢しか無いように思えた。
『僕はこれから絵梨奈さんの家に行くよ。真衣子さんはどうする?』
ただ待つだけというのは性に合わない。私は私の出来る事をする。
「……行くわ」
迷っている暇などない。
そう、心に決めたのだった。
絵梨奈ちゃんの家に着いた。部屋に入るなり修平が居なくなった事を告げる。
「やはり、と言うべきか何というか……それだけ執着していたのですね」
半ば呆れている絵梨奈ちゃんだが、キーボードを叩く手は忙しなく動き続けている。
「調べ物?」
「えぇ……それと各所からの現象の報告が無くなりました。修平さんを呑み込んだから、と考えるべきでしょうね」
尚も手は止まらない。パソコンを覗くと、メールやらブラウザやらが画面を埋め尽くしていた。
「異世界に対しての異物が修平君な訳だね。だから一時的に通じる道が閉じたんだろう」
「また開いたりは?」
「確実に開くと思うよ」
それもそうか。明日になればまた確認されるのだろう。
こうしている今も時間は流れて行く。世界は回る。回り続ける。
でも此処には、この世界には修平が居ない。彼の居ない世界に私達は居るのだ。
それが堪らなく悲しくて。
私はあの頃を思い出していた。修平を修ちゃんと呼んでいたあの頃を。
(感傷に浸ってる場合じゃないのにね……早く帰ってきてよ、修平)
そう願うばかりだった。




