12話 穢れとカレン
抉れた芝生は自動修復の術式を組み込んであるらしいので、放っておいても大丈夫だという。因みに術者は誰なのか聞くと、
「バートリーよ」
とフェリアが答えた。ロベルトにはたっぷり叱られて貰うとしよう。
「少年、バートリーに穢れているとか言われなかったか?」
「ん?言われたけど……」
その直後に部屋から追い出されたが、それがどうかしたのだろうか。
「やっぱり……」
フェリアがポツリと呟く。
「嬢ちゃん、心当たりある?」
「門を開いた時、少しだけ違和感がね……」
深刻そうな顔をしているが俺にはサッパリだ。
「穢れているってどういう事なんだ?説明してくれ」
率直に聞いてみる。
「俺は詳しくないから嬢ちゃんに丸投げするわ」
「穢れっていうのは反魔術の事よ。あらゆる魔術をも凌駕する力がシュウの身体の中にあるの」
反魔術?そんな物が何で俺の身体に?
「穢れているからといって魔術が使えない訳ではないわ。気を付けなければいけないのは、鍵を外さない事ね」
鍵?うーん、理解が及ばないが、魔力を生み出す門と穢れを封じ込めてる鍵とやらが俺の身体の中にある訳で、つまり……?
「鍵が外れると大気に漂う魔力や他人の魔力も吸い込んでしまうの。そしてその直後に体内から魔力の塊が災厄となって溢れ出す」
「その鍵っていうのはどうしたら外れるんだ?」
「魔力の源は生命力。体内の門を通して生命力を魔力に変換しているの。鍵が外れるのは、魔力が尽きた時」
「魔力を使い過ぎたら死ぬって訳か」
「私達はシュウの様に鍵はないから魔力が尽きたら死んでいくだけなんだけどね」
なるほど。要は使い過ぎなければいいって話なんだろうな。どれぐらいの容量があるのかは把握してないけど。
「魔力は休んでいれば回復するから、今日はこの位にしましょう。屋敷を案内するわ」
フェリアは屋敷へ戻っていく。その後をロベルトが付いていく。俺もその後に続いた。
屋敷に戻りフェリアとロベルトと共に食堂や広間を巡る。どちらも1階にあり、かなりのスペースを確保している。因みに屋敷は4階建である。順に案内してくれるみたいだ。
「広い食堂だな」
何人かお手伝いさんの姿が見える。晩飯の支度をしている様だ。食欲をそそる香りが漂っている。
「屋敷の住人全員が食事する場だからね」
「住人って何人ぐらいいるんだ?」
「今は50人位よ」
「そんなにいるのか……」
食堂から出て、2階へ。俺が居た部屋もこの階にある。バートリー、フェリア、ロベルトの部屋も同じ階だ。
「この階は主に客室。3階も同じ。で、4階には書庫と屋敷の持ち主の部屋があるの」
「持ち主?」
相当な金持ちか、はたまた有名人とかだろうか。挨拶しておくべきだろうか。
「ほとんど居ないから、会えるチャンスは中々無いわよ」
「いねぇのかよ」
持ち主の正体は分からずじまいである。
「さて、カレンに会わせなきゃね。部屋は3階の端っこだから」
カレンという名前から金髪縦ロールの性格の悪いお嬢様をイメージしてしまう。そんな子だったら嫌だなぁと思いつつ、階段を昇り3階の左端へ。とある部屋の前で立ち止まる。
フェリアが軽く扉を叩く。すると中から声が聞こえた。
「……どうぞ」
金髪縦ロール、では無いな、うん。か細い声だし。
部屋に入ると、パーカーを着た女の子がいた。髪は肩ぐらいまでの長さで茶髪、何処か気品に溢れている佇まいがちょっとだけ大人っぽい。でも多分、美鈴と同じ位の歳だろう。
しかし……この子、日本人だよな?
「カレン、また新しく住人が増えたのよ。知らせようと思ってね」
「少年、カレンは臆病だからあんまり脅かすなよ?」
「脅かさねぇよ……」
俺を何だと思ってんだ、ロベルトは。
カレンはじっと俺を見つめている。少しむず痒い。
「俺は葉山 修平。王都で衛兵に襲われてるところをフェリアとロベルトに助けて貰ったんだ。えっと、よろしくな」
「……はい、よろしくお願いします」
握手を交わす。ひんやりとした感触が伝わる。
「カレンも自己紹介しとけよー」
ロベルトに促されたカレンは、ポツリと口を開く。
「……私は一ノ宮 華蓮、です」
その一言に俺は衝撃を覚えた。これは偶然なのだろうか。
異世界に転移させられてから早くも現実世界との繋がりを見つけたのだ。




