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under ground  作者: 七瀬
第1章 侵食
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10話・魔術講習1

 部屋に戻ってきた。息苦しさからは解放されたが、バートリーに対しての疑念は消えない。バートリーにしてみれば俺は怪しい人間なのだろうが、あの態度はいただけない。

「お疲れ、シュウ。何かされなかった?」

 されたと言えばされたが、俺には説明出来ない。何よりキルシュバウムの内情とここが王国の外れにある村だという事と、他にも国がある、ぐらいの知識しか無いのだ。

「バートリーが手を翳した瞬間、痛みが襲ってきたんだけど……」

「あぁ、あれについては害は無いから大丈夫。キルシュバウムの人間か確認する為の術だから」

 術、ねぇ。そういやバートリーも魔術やら召喚術やら言ってたっけ。その辺りも解説が欲しい。

「術……」

「よーし、シュウの為に私が実践を交えながら教授します。えいっ!」

 フェリアが指を振ると、だだっ広い庭に移動していた。多分この屋敷の敷地内なんだろう。瞬間移動、したのか?

(神崎も似たような力、持ってたな……)

 投げ飛ばされたのを思い出してイラッとした。

「嬢ちゃんさぁ……わざわざ術使わなくてもいいんじゃないの?」

 ロベルトは呆れている。部屋から庭まではそんなに離れていないから徒歩でも良いのだろうが、術を見せたかったのだろう。

「実践を交えてって言ったでしょ?さて、ガルシア大陸に伝わる術は大まかには魔術と剣術に分類されるの。まぁ剣術も魔術から派生した物だから厳密にはその1種なんだけど」

 なるほど。ん?だとしたら魔術が使えるフェリアは……

「剣術は使えないのか?」

「私には無理。適性が無いから」

 どうやら使用するには適性とやらが必要らしい。

「確か、加護の類は無くて適性はあるって言われたな……」

「え?加護が無いの?」

 素っ頓狂な顔をするフェリアだった。

「加護ってのは?」

「ガルシア大陸の人間は加護を持って生まれるの。怪我を治したり、魔術を強化したり……なるほど。そういう事ね……問い詰めないつもりだったけど、聞き直しといた方が良さそうね」

 あー……まぁ、バートリーには看破されたし隠す意味も無いか。

「シュウは、何処から来たの?」

 さっきまでのフレンドリーな感じはなりを潜め、少しだけ敵意を滲ませたフェリアの言葉に俺はこう切り返す。

「ガルシア大陸の外から」

「……そう。ねぇ、ロベルト」

「ん?何だい、嬢ちゃん」

 フェリアはいつの間にか眠り込んでいたロベルトに声を掛ける。

「あの子もそう言ってなかった?」

「あの子って……ああ、カレンか」

 どうやら俺の他にも外から来た人間がいるらしい。流石に佐久良町からって訳じゃないだろうが……まさかという事もあるかもしれない。

「シュウ、魔術の講習が終わったらお屋敷の案内がてらカレンに会わせるわ」

「あ、あぁ」

「まずは身体の中にある門を開くわね」

 フェリアの手が俺の身体に触れる。うおお……ムズムズする。真衣子にはあまりこういう事されないから慣れないな。

 フェリアは目を瞑り小声で呟いている。日本語ではないので聴き取れない。

 身体の中を探られている感覚がする。あまり気持ちの良いものでは無いが、これも魔術を使える様にする為だ。耐えるんだ。

 フェリアはそっと手を離す。

「……」

「ん?どうした?」

 黙ったままのフェリアに俺は問い掛ける。

「いや、何でもないわ。門は開いたから使える筈よ」

「お、おう」

 答えるまでに間があったのが気になるが、とにかく魔術が使える様になったのだ。色々試してみたい。


「改めて、魔術講習を始めたいと思います。初歩的な魔術を今から教えるからね。まずは……移動術から」

「よーし、少年。俺を見てろよ?」

 ロベルトが遠くから呼び掛けてくる。

 しっかりとその姿を確認する。

 俺の前方、約100m位に離れて立って手を振っている。じっと見つめる。

 目を逸らさずに見ていた筈だったが、ロベルトの姿が見えなくなった。

「あれ?」

「後ろだよ、少年」

 肩を掴まれる。いつの間に移動していたのか全く分からなかった。

 俺に使えるのか?使えたら登校とか楽になりそうだな……いやいや佐久良町に帰れる手立ては無いんだった。

「今のが移動術。空間と空間の間を瞬時に移動するの。ただ、制御が上手くいかないと下手したら屋敷に突っ込む事になるから気をつけてね」

 そんな笑顔で言われてもなぁ。

「使うには?」

「ま、習うより慣れろってこった。少年、俺の手に掴まれ」

 説明とかしてくれるんじゃないのかよ……

「よし、じゃあ俺が居たところまで3、2、1で跳ぶからな。絶対に手を離すなよ。怪我するからな」

 絶対にと言われるとフリだと思うんだが、離したら洒落にならなそうだし従おう。腰を落とし、グッと踏み込む。

「いくぞ。3、2……」

 1、と呟く前にロベルトが手を離したのを俺は見逃さなかった。

 そして、次の瞬間、しっかりと移動していた。怪我はしていない。

「お。上手く跳べたみたいだなぁ、少年」

「1つ良いか。ロベルト、絶対に手離すなよとか言ってたな……離しただろ!!」

「ありゃ?あの一瞬で見えてたのか。ほほう、こりゃ有望だねぇ」

 悪く思って無さそうな態度に苛立ちながらも、高揚感を覚えていた。

 確かに俺は跳べたのだ。

「じゃあ、次は1人でフェリア嬢ちゃんのところまで跳んでみな」

 ロベルトが指差す先にフェリアが立っている。あそこまで跳ぶ。強く強くイメージして、踏み込む。

 深呼吸を数回、心を落ち着ける。

 跳べる。大丈夫だ。

 フェリアの元まで、跳べ……!

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