9話・バートリーという男
フェリアとロベルトに連れてこられたのは、長く広い廊下の左右にある部屋の内の1つだった。
バートリーという男の部屋らしい。フェリアが耳打ちしてくる。息が掛かって、ちょっとくすぐったい。
「気を付けてね、シュウ」
「あ、あぁ……」
「とにかく嘘は吐かない事だよ、少年。ほんと面倒な性格してるからねぇ、バートリーは……」
フェリアとロベルトからの忠告を受け取った俺は、部屋に入る。
「ん?」
中に居た男が俺に気付く。
その男は赤髪で、狐の様な目をしていた。細身だが筋肉はかなり付いている様に見える。
直感だが、このバートリーとかいう奴……神崎と似た様な感じがする。但し、バートリーの方が数倍嫌らしいだろうが。
「君が担ぎ込まれた客人だね?僕はバートリー・オルテンシア。バートリーでいいよ」
そう言って手を差し出してくる。取り敢えず握り返しておく。
「君の名前は?」
「葉山修平だ」
「あんまり聞かない名だね……何処からやってきたのかな?」
「遠い東の国から」
日本なんて答えたら怪しまれてしまう。誤魔化しておくしかない。それに嘘は吐いていない。
「東の国……」
バートリーは顎に指を当てて考え込んでいる。
「えっとシュウヘイ君だったかな?キルシュバウムには、黒髪の人間は居ないんだよ」
いきなり何を言い出すんだ、こいつ。
反論しようと口を開くが、バートリーに遮られる。
「つまり、君はキルシュバウムの人間ではない。だとすると、残る可能性はキルシュバウム以外のガルシア大陸の人間かはたまた異世界人か……まぁ、ガルシア大陸の人間だったら僕はすぐに分かるから違うんだろうねぇ」
「お前、さっきから何が言いてぇんだよ……」
「君は僕らからすると異世界人ってところかな?いやはや恐れ入ったねぇ。王都で衛兵に殺されそうになっていたところを助けたら異世界人だった、なんてねぇ。あっはっはっ!」
早口で捲し立てた挙句に笑い出すバートリーに俺は嫌悪感しか抱かなかった。まともに会話出来る気がしない。フェリアやロベルトとは根本的に違っているのだ。
「さて、そうなると確かめなければならないね。君が異世界人かどうかをね」
バートリーは俺に手を向ける。
激痛が走る。腕を切られた時よりも激しい痛みだ。
「……っ!!!」
俺は蹲り、必死に耐える。
数秒で痛みは消え去ったが、立ち上がれない。
「いきなり……何しやがる」
「どうやら加護の類は無い様だね。魔術その他の適性はあるみたいだが……」
「……」
バートリーは1人でブツブツ呟いている。段々腹が立ってきたが、冷静でいなければならない。
「懸念すべきは……」
バートリーは俺を睨む。明らかな敵意が俺に向けられる。
「……穢れている、か。君、部屋から出て行ってくれるかな」
「は?」
「出て行けと言ったんだ。全くフェリアとロベルトはとんだお人好しだよ。少しは疑う事を覚えて欲しいね」
その言葉を最後に俺は部屋から追い出された。
外ではフェリアとロベルトが待ってくれていた。
「お疲れさん、少年。話、通じなかったろ?」
「あぁ、何なんだあいつ。適性がどうとか、穢れがどうとか……意味わかんねぇよ」
「シュウ。廊下で話すのもなんだし、部屋に戻りましょう」
確かにバートリーの部屋の前で話していたら難癖付けられそうだしな。
という訳で部屋に戻る事となった。




