5話・力
「どうやって追い付いたんだ?」
疑問に思ったので聞いてみた。俺が走り去った後に追い掛けたのでは多分間に合わなかったのではないかと思うのだが……
「テレポートしてきたんだよ」
「頭イかれたのか、神崎」
冗談言うタイプなのかな……
「本当の事を言ったまでだよ」
テレポートってつまりあれだろ。瞬間移動だろ。それを、神崎が?
「お前、テレポート出来んの?」
「ああ……絵梨奈さんの家に行った時に話していれば良かったね。2年前、海に開いた穴の影響かはハッキリとしないけど、佐久良町一帯に微弱な波動が広がってね」
その波動に人間の脳に眠っている力を発揮させる作用があったらしく、
「様々な恩恵を得た、という訳さ」
「あれか。超能力者になったってやつか」
「そうだね。じゃあ、取り敢えず絵梨奈さんの家に飛ぼうか」
飛ぶ……?
その意味を理解したのもつかの間、肩に手を置かれた。
一瞬身体が浮く感覚がしたと思ったら既に俺と神崎は絵梨奈の部屋に居た。
「綾人さん、修平さん、お帰りなさい。どうやら……あの柱と穴は消えた様ですね」
「……」
意識が追い付いていない。今、瞬間移動したんだよな……?
「修平。私に何か言う事は?」
「……ごめん」
二の句が継げないのはふわふわしてるからだと思いたい。
「ていうか擦り剥いた後があるけど、転んだの?」
「いや……柱に触れようとしたら神崎に投げ飛ばされた」
割と痛かったし、神崎にちょっとした恐怖を覚えたのも事実である。
100%俺が悪いんだけどな……
「必死だったんだ」
見え透いた嘘を吐くんじゃねぇよと心の中で呟く。
「瞬間移動してきた、という事は修平さんに力について話しましたね?」
「うん。絵梨奈さん、言い忘れてたでしょ」
「失念していました」
素直に謝る絵梨奈であった。
その後、神崎の瞬間移動の様な力を持った人間が佐久良町内だけではなくその周りの町や市にも居る事、但し全員が全員持っている訳ではないという事、力は複数または1つ得られ、そのどれもが人智を超えた物だという事を絵梨奈は話してくれた。
「絵梨奈も力を持ってるのか?」
「はい。私は事象を感知する力を持っています。主にアンダーグラウンドに寄る現象に限定されますが」
アンダーグラウンド起因の力だから限定的なのだそうだ。
「力を得た経緯は?」
真衣子が質問する。俺は神崎から聞いているから知っているが、もう一度しっかりと聞く。
「2年前の海に穴が開いた現象により、微弱な波動が広がったのです。その波動が私たちの脳に作用して力を引き出した」
「となると……」
顎に手を当て考え込む真衣子だったが、直ぐに何かに気付く。
「さっきの穴と柱から波動が漏れていた可能性はある?」
「微弱な反応を感知しています。ごく狭い範囲だった様ですが」
つまり、俺たちも何らかの力を使える様になったというのか?
少し興奮した。
夢のある話だと思う。力は確実に存在している。それを俺は身を以て体感している。あんな力が、俺にもー
絵梨奈の家を出た後も、気持ちは収まらなかった。
日常が非日常に染まっていく感覚がいつの間にかクセになっているのをヒシヒシと感じつつ帰途に着くのだった。




