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under ground  作者: 七瀬
第1章 侵食
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3話・顕現

「アンダーグラウンドという名前は僕と絵梨奈さんで付けたんだ。ただ異世界と呼ぶのも味気ないからね」

 神崎はそう話す。名前に関しては別にどうでもいいが呼び方があるならそれに従う。

「あの黒い球体はアンダーグラウンドへの入り口って事でいいのか?」

「その認識で構わないよ」

 個室の扉が開く。マスターが珈琲とトーストを持ってきた。

「マスター、トーストは頼んでないですけど」

「サービスだよサービス。トースト代はいらねぇからな」

 強面なくせして気遣いだけは人一倍あるんだよな。

「えっと、じゃあ……あの黒い球体に触れたらどうなるんだ?」

 マスターが出て行ったのを見計らい尋ねてみる。まぁ、大体想像はつくが一応だ。

「呑み込まれて戻れなくなるっていうのが定石なんだろうけど、生憎異世界だからね。どうなるのかは……」

 実際に触れてみないと分からないって訳か。

「あれには絶対に触れないで」

「真衣子……?」

 今まで黙っていた真衣子が口を開く。

「……あっ、いや何でもないの。ごめん、続けて」

 一ノ宮先輩を睨んでいた事といい、やっぱり何か隠してるんじゃないだろうか。だが、聞いたところで真衣子は答えない筈だ。話してくれる時を、待つしかない。

「現時点で話せる事はこの位かな。引き続き調査をー」

 突然、着信音が鳴り響く。

「ごめん、僕だ」

 神崎が携帯を取り出す。画面を確認し、耳に当てる。誰かから電話が来たらしい。

「もしもし。絵梨奈さんかい?」

 相手は絵梨奈か。進展があったのか?

「……なるほど、分かった。今からそっちに向かうよ。じゃあ、また後で」

 神崎は電話を切ると、トーストを一気に珈琲で流し込み立ち上がった。

「どうかしたのか?」

「……修平君達も一緒に行こう」

 それだけ言って、神崎はお代を置き店を出る。

 珍しく焦っている様に感じるが、そこまでの事があったのだろうか。

「マスター、ご馳走様」

 金を払い、店を出た。町はいつもと変わらない。

「今から何処に行くんだ?」

 また絵梨奈の家にでも行くのだろうか。神崎は俺の方を見ずに答える。

「佐久良町中心部、一ノ宮財閥の本拠地がある場所に」

「財閥の本拠地?」

 佐久良町中心部。そこは一ノ宮財閥の人間が住む場所だ。財閥関係者以外は立ち入り禁止となっている。

 敷地自体はそこまで大きくはないが、存在感を放ち続けている。

 ただ、この前一ノ宮財閥の当主、一ノ宮紫苑が財閥を解体するとか言っていた報道があったが……

「神崎君」

「絵梨奈さんも向かうらしい。アンダーグラウンドに関する何かが起きたとみていいだろうね」

 中心部でそれが起きたっていう事か。ザワザワと胸騒ぎがした。

 多分、俺は期待している。

 逸る気持ちを抑えつつ、佐久良町の中心部へ向かう。


 30分程で中心部に着いた。何度か来た事はあるが、見覚えのある建物が無くなっていた。

 いや、無くなっていたとかそういうレベルではなかった。建物が地面ごと消え去っている。

 その場所にあるのは黒い穴のみ。穴の底は全く見えない。

 穴の側に絵梨奈が立っていた。

「皆さん……」

「絵梨奈さん、これは……?」

 絵梨奈は穴を見詰めたまま無言で立ち尽くしている。この穴は一体何なのだろうか。あの黒い渦と同じ様に異世界に繋がっているのか?だとしたら俺は、異世界に行ってみたい。

「修平、穴には近付かないで。帰ってこれなくなるわよ」

「……分かってるよ」

 真衣子に釘を刺される。だが、それでも俺の好奇心は収まらない。異世界に行けるなら行ってみたい。それはアンダーグラウンドを知ってからずっと頭の中にある。

 神崎には危険な考えだと言われたが、俺はそうは思わない。

 ……もしかしたら、おかしくなっているのかも……しれないが。

 俺はとにかくこの穴の先が気になる。

「この穴、確か2年前にも……」

 真衣子が呟く。海に穴が開いたと書かれていた新聞記事を思い出す。俺の記憶には全く無いが。

「2年前と同じです。ですが……」

 絵梨奈は穴を見詰め続けている。

 俺たちも黙って穴を見る。黒い穴の底は何も見えない。深い深い闇がそこにあるだけだ。

(……?)

 身体が何かを感じ取る。微かに揺れていると分かった、その直後。

 穴から黒い柱が伸びた。

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