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世界は崩れ始める。其処に存在する何もかもを呑み込みながら、崩れていく。
人や建物、海や山も全てを呑み込む。
そんな光景を、俺はここ最近何度も見ている。
勿論、現実ではそんな事は起こる筈が無いのは分かっているので、夢なのだろう。
夢にしてはいかんせんリアリティが有り過ぎる故に混同しそうになるが、今日も俺が住む佐久良町は平和そのものである。
では、自己紹介といこう。俺は葉山 修平、この春から私立佐久良高校の1年生になる。親は事故により2年前に他界している。それからは叔母に援助して貰いながら、妹の美鈴と暮らしている。因みに俺の家は佐久良町の西にある。
それと、俺にはここ2年間の記憶しかない。詳しい原因は定かではないが、どうやら2年前の事故に寄るものだと医者は言っていた。まぁ、記憶が無くて困ったのは事故直後だけだ。今は普通に生活出来ている。
今日は私立佐久良高校の入学式だ。早く支度をしなければあいつが来てしまう。あいつとは、俺の幼馴染である加藤 真衣子の事だ。小さい頃から今までずっと一緒に居る。ずっと離れずにここまで歩んできたのだ。
そんな真衣子とこれまでと変わらずまた毎日を過ごせるのは何と幸運な事だろう。神様は信じていないが取り敢えず感謝しておこう。ありがとう、神様。
という訳で朝飯を作る。美鈴は既に学校に向かった様だ。食べた跡があったから分かったのだが、兄としてはちゃんと食べ終わったら片付けて欲しい。
先に食器を洗う。ちょっと寂しいのでテレビを点けた。相も変わらずどっかで起きた事件やら芸能人の話題やらを垂れ流し続けるニュース番組を見ながら朝飯を食べる。
10分程で食べ終わり、片付けをしていると玄関のチャイムが鳴った。時刻は8時。まぁ、そろそろ来るとは思っていた。
「おはよう、真衣子」
「おはよう〜」
互いに挨拶を交わす。真衣子は髪を2つ結びにしていた。背が低く細身な真衣子だが、髪型のせいでより幼く見える。本人に言ったら回し蹴りが飛んでくるので言わない。
「ちょっと待っててくれるか?すぐ準備するから」
「じゃあ、お邪魔します」
真衣子は家の事情を知っている。まぁ、気にかけてくれているし、妹とも仲良くしてくれてもいる。半分家族みたいなものだ。
俺は真衣子と居るときが一番落ち着く。気を使わなくていいからだ。これから新しい場所に向かうのはかなり緊張するが、何とかなるだろうか。
「美鈴ちゃんは学校?」
「あぁ、とっくに行ってる」
「そっか」
緩い時間が流れる。入学式は9時からの予定だ。学校までは30分も掛からないので余裕はある。
「わりぃ、待たせた」
「ん。行こっか」
鞄を持ち、家を出る。
楽しい高校生活を夢見て、佐久良高校に向かうのであった。




