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レイドイベント発動

お久しぶりでーっす!

KURAだよ!

復帰したぜ!


俺らがアイテムの準備やら、調べものしてると†影の騎士†が帰ってきた。

俺の前で膝をついて報告する。

相変わらずのロールプレイだ。


「やってやりましたよ大将」


コイツが言うには祈りを捧げる場に逆十字架とギルドの名前を落書きし、さらに御神体までかっぱらってきたらしい。

ふむふむ、上出来じゃないか?


「おいシャドウ。結果は?」


そう虚空に問いかけると合格と二重丸が書かれた紙が上からヒラヒラと落ちてきた。

ま、そりゃそうか。


「んでアイツらの反応は?」


「そりゃ怒り狂ってましたよ。当たり前でしょう?」


「だろうな。んでその御神体とやらは?」


「ここに」


†影の騎士†が掲げるものはミイラのようになっている枯れた腕だ。

ま、よくあるモノか。


「へぇー? どうするよコレ」


「献上します」


「……いらねぇ……」


「あ、じゃあ僕がもらっていいかい?」


口を出したのはヨルだ。

えーと、お前の職業ってなんだっけな。


「メンバーの職業を忘れないでもらえるかなぁ」


「……声に出してないぞ?」


「顔に出してるんだよねぇ。僕は魔女だよ。君をどうやって見つけ出したかも説明したじゃん」


そうだったっけなぁ。

……あぁ、そうだ。

そういえば占いで見つけ出したとか言ってたな。


「んで? どうすんの?」


「ちょっとね。折角だからコレ使って何かしようかなぁって」


「そ。……なぁ、今回勝てると思うか?」


少しだけ心配になり聞いてみた。

するとヨルはポカンとしてクスリと笑う。


「勝てるわけないじゃん」


「……だよな。やーっぱ負け戦だよな」


「なに? 勝てるとでも言ってほしかった?」


ニマリとヨルは笑っている。

いちいちムカツクな。

ま、だけどそうじゃない。


「逆に安心したぜ。勝てないイベントなんてクソだろう?」


その時アラームが鳴り響いた。

……やっぱか。


『イベントが開催されます。皆様お手元に御注視ください』


目の前に半透明の板が現れる。

内容はこうだ。

神に抗う愚か者を殺せ。

ギルド『フォールン』のギルドマスター並びにメンバーを倒したギルド(・・・)に報酬。

戦い中神の加護(被ダメージ七割軽減)を付与。

戦ったものはこれ以降宗教に属する者からの好感度アップ。

お助けNPCとして天使降臨。


……おいおいおい。

楽しいなぁ。

最高じゃないか。


「……ねぇ、ヤバイんじゃない?」


「あぁ、ヤベェな。でもお前、笑ってるぜ?」


「そっちこそ」


ま、もう一度士気上げ直した方が良いかな。


「んじゃ改めて演説するとするかぁ」


「でも皆ボク達みたいにワックワクだぜ?」


それでもだ。

もう一段階アゲる。


ギルドの中の高台へと上る。

地獄の悪鬼羅刹のような笑みを浮かべるメンバーが目に映る。


「おいおい、ここは地獄か?」


「地獄? 違いねぇ」


「そりゃ俺らが鬼ってことですかい? 鬼よか悪事は働いたてもりですがね」


ガヤガヤと笑い声とヤジが飛んでくる。

相変わらず楽しい奴だよお前らは。


「まぁ待てお前ら。今ギルド始まって二度目の負け戦だ。何故そうも笑える?」


そう言う俺も笑っている。

それを聞くアイツらも笑っている。


「それ聞くか? 奇人変人の辿り着く蟲毒のツボみてぇなココにいる俺達に」


「逆にこんくらいの難易度の方が丁度いいってもんですよ」


「宗教戦争ねぇ、それって凄くお金が稼げそうね!」


さすがだ狂人ども。


「よく聞け? 抜けたいなら抜けたって構わねぇ。なんなら俺だって抜けたいぜ」


ちょっと演技がかった動きで冗談を言うとコイツらは笑いだし、似合わねぇだのバレバレだのバカだの散々言い始めた。


「コイツらは……。まぁいい」


一気に顔を引き締めて柵をドンと叩く。

するとあんだけうるさかったのが一時停止でも押されたように静まり返る。


「いいか? テメェら。勝てると思うか?」


シンと答えが返ってくる。


「そう。決して勝てねぇ。しかも俺らはなんだ? ヒールだ。悪役だ。ヴィランだ。エネミーだ。悪党だ」


指を振り回し、身ぶり手振りではなく、己の声を演奏する。表現力を演奏する。


「コレは悲しい物語か? 虚無感を体験するゲームか? 違うだろう? 俺らの掲げた行動指針はなんだったか?」


『楽しむこと』


ギルドメンバー口を揃え、チリが積もった山のような声が返ってくる。

大きく頷き、ゆっくり声を出さずに笑い、息を吸い次の言葉に備える。


「ならば! 何をする!」


今度は各々が別の答えを投げつけてまるで野菜ジュースのような混沌が返ってくる。

己の武器の、己の戦場を投げつける。

まさに言葉になっていない答えに俺が答える。


「そうだ。一つ、俺の言葉を訂正しよう。コレは負け戦なんかじゃなかった。俺らは負ける。だが、相手に勝たせねぇ。ならば、コレをなんという? 俺は戦争、だと思う。誰もが損をして誰もが得をしない、クソッタレな戦争だと!」


「なぁ、俺らは戦争の悲惨さを知っているだろう? 俺らは戦争なんてやめようと叫ぶ賢者か?」


『否!』


爆音が否定を叩きつける。

あぁ、そうだ。そうだよなぁ?

思わず口が緩む。


「そうだ。俺らは元からクソッタレだ。好きだよなぁ? 戦争が」


『好きだ!』


またもや肯定を爆音が叩きつけた。

そうだよなぁ? 戦争屋ぁ。


「勝て、とは言わねぇ。勝ちようがねぇからなぁ? 負けんな、コレも違うだろう? 俺らは結局負け犬だ。だから、勝たせんな」


「決して、勝たせんな。勝った、なんて笑顔で言わせんな。苦虫でも食わせてやれ」


声はない。

だが目に映る狂気の笑みが了承を意味することなど俺にはわかっていた。


「さぁ、戦争だ。カッコつけていこうぜ?」

週一以上更新やっていくんでよろしくお願いしますね~!

では、じゃあね!

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