ドラゴンと海【400文字小説】
ドラゴンは旅人を背中にのせて海の上を飛んでいた。
ドラゴンはこのどこまでも広がっている海が大好きだ。
水平線まで青い水が続き、永遠に広がるのではないかと錯覚させるそれは、自分の体よりもはるかに大きいにも拘わらず、波を立て、海流を作り、常に動き続けている。
そのエネルギーはどこからか来ているのか? どうして、海流が発生しているのか? それはドラゴンにとって大きな謎だ。
しかし、そんな謎や疑問などどうでもよくなるぐらい、ドラゴンは海が好きだ。
ドラゴンは沈んでいく夕日によって真っ赤に染まる海が大好きだった。夜、真っ暗になる海が大好きだった。昼、青い水をどこまでも広げている海が大好きだった。
やがて、ドラゴンと旅人は海を越えて新たな大陸にたどり着く。さて、今度はどんな冒険が待っているのだろうか?
旅人の心情こそ、残念ながらわからないが、ドラゴンは新天地に心を躍らせながら遠くに見える山脈へ向けて一気に速度を上げた。