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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第11章 キラキラした小箱
95/100

残された者は

 カウンターの奥から駆けてきたのは、もちろんアンジェラ。

「!!!……」

 アンジェラは「子連れマンモス」と御落胤の遺体を見ると、思わず口を押さえ、言葉にならない声を上げた。

 ブラックシャドウのショートソードには、べったりと血糊がついている。まさか、アンジェラまで「サービス」でぶっ殺すつもりではないだろうとは思うが……

「用は済んだ。私はこれで失礼するよ」

 ブラックシャドウは手近にあった机に飛び乗り、わたしの頭の上を跳び越して、あっという間に、机伝いで入り口のドア付近まで移動した。

「では、さらばだ!」

 ブラックシャドウはそう言うなり、ドアを開け、下町よりもさらに下等な街の通りに消えた。


 クラーケンの宿の1階では、アンジェラが「子連れマンモス」と御落胤の死体を前に、呆然とたちつくしている。

 わたし的には、御落胤が殺害されたということで、債務は履行不能。ということは、当然、ここにはもう用はない。

「それじゃ、そういうことで……」

 と、わたしはプチドラを抱き、傍目には颯爽と見えるように(つまり、ごまかしの意味も含め)、クラーケンの宿を出ようとした。

 すると、プチドラはピョンと机の上に飛び降りて、両手でわたしの手首をつかんで引っ張り、

「マスター、いくらなんでも、それはひどいのでは?」

「ひどいって、何が?」

「あの子をあのままにしておくのは、可哀相だよ」

「そう言われても……」

 わたしにはアンジェラを連れて帰って養う義務も義理もないし、「可哀相」というだけで子供を引き取っていたら、そのうち孤児院を建てなければならなくなる。「どうしようか」と、困ったような顔をアンジェラに向けると、

「わたしのことは、気にしないで。大丈夫ですから……」

 アンジェラは、消え入りそうな声で言った(「大丈夫」とは、とても思えないが……)。健気とは、こういうときに使う言葉だろうか。アンジェラをよく見ると、顔立ちにも気品が感じられ、そこはかとなく高貴な香りがただよっている。連れて帰るくらいなら、まあ、いいか……

 わたしはつかつかとアンジェラに歩み寄り、肩をぽんとたたいた。

「一緒に来ない? というか…… 一緒に来なさい。これは『貴族様』の命令よ」

「えっ!?」

 アンジェラは、なんだかわけが分からないような顔をしていたが、やがて、首を小さく縦に振った。

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