対決の結末
「うぃぃぃぃ~~~!!!」
何を興奮しているのか、御落胤は爪を立て、目を見開き、ブラックシャドウを威嚇している。
「やっ、やめ……!」
と、「子連れマンモス」が言いかけた時には、既に遅かった。御落胤は大きくジャンプ、ブラックシャドウに飛び掛っていた。ブラックシャドウの腕力なら、御落胤を取り押さえるくらい、造作もないことだろう。ということは、御落胤はブラックシャドウの手に落ちることになり、これは、わたし的にもマズイ……
ところが、ブラックシャドウはショートソードを構え、エイヤと御落胤の心臓をひと突き。
「ぐあああーーー!!!」
御落胤は、とても人のものとは思えない断末魔を残し、果てた。
一瞬の(体感的には、かなり長く感じられたが)沈黙を挟み……
「あああーーー!!!」
今度は、「子連れマンモス」が声を上げた。そして、ガックリと膝をつき、絶望的な眼で御落胤の亡き骸をのぞきこんだ。
ブラックシャドウは、ショートソードの剣先を下にして高く掲げ、
「隙あり! 『子連れマンモス』!!」
と、ショートソードを「子連れマンモス」の首筋に突き入れた。
「んがっ!」
首筋から鮮血をほとばしらせ、「子連れマンモス」は、あえなく絶命してしまった。
ブラックシャドウはショートソードで御落胤の衣服を切り裂き、背中にあるハート型のあざ(焼印)を確認すると、ニヤリと白い歯を見せ、
「任務完了、『子連れマンモス』殺害は……サービスかな」
「どういうこと? あなたの任務は御落胤を帝都まで連れて帰ることじゃなかったの?」
「こっちの手の内もバレていると思ってたがな、カトリーナ・エマ・エリザベス・ブラッドウッド様」
ブラックシャドウには名前を明かしていないはずだ。でも、マーチャント商会とつながっているなら、知っていても不思議ではない。むしろ、わたしの正体に関する情報をあらかじめ入手していたから、最初に、クラーケンの宿で声をかけたのだ。
「ということは、単に、わたしが頼まれた仕事を妨害できればよかったと?」
「次善の策としてはね。御落胤が存在しなければ、連れて帰りようがあるまい。ふふふ……」
その時、
「お兄ちゃん、どうしたの? 今、なんだか、すごい声が……」
カウンターの奥から、少女がひとり、怪訝な表情を浮かべて駆けてきた。




