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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第11章 キラキラした小箱
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「子連れマンモス」復活

 オヤジはタバコを捨て、ゆっくりと立ち上がった。身長は、ツンドラ候には及ばないが2メートル以上。金剛力士のように、威圧感は相当なものだ。先刻までの、のんびりとした雰囲気は消え、クラーケンの宿のオーナーは、今や「子連れマンモス」としての顔に戻っている。

 ただ、わたしが「御落胤を引き渡せ」と言った時には、まるで相手にしなかったのに、ブラックシャドウ相手の場合には本気モード全開。なんだか軽く見られているような気がする。ブラックシャドウとは、エージェントをしていた頃の因縁があるのだろうか。まるで壁のようにブラックシャドウの前に立ちはだかった「子連れマンモス」は、喉から声を絞り出すようにして、

「帰ってくれ。あんたも、そちらのお嬢さんも」

「そう言われても、こちらにも都合がある。このまま黙って引き下がるわけにはいかないのだ」

「そうかい、言っても分からないなら……」

 と、「子連れマンモス」はカウンターから身を乗り出し、牛刀を取り出した。ブラックシャドウは腰に差したショートソードに手をかける。その氷のように冷たい視線は「子連れマンモス」に注がれていた。


 両者とも、にらみ合ったまま動かなくなった。お互い、牛刀とショートソードを構え、隙をうかがっている。俗に言う「先に動いた方が負け」みたいな、緊迫した場面。

 でも、わたしのことは無視ですか……

「おーい……」

 声をかけてみたけど、両者とも反応しない。完全に二人の世界に入ってしまったようだ。

「マスター、どうしよう」

 プチドラも、やや困惑気味。

「どうしようもないわね。でも、面白そうだから、このまま『子連れマンモス』VSブラックシャドウの『因縁の対決』を見物させてもらいましょう」

 両者、ピクリとも動かず、息詰まるようなにらみあいが、しばらく続く。やがて、

「最後に、もう一度言う。御落胤を引き渡せ」

「何度言っても答えは同じだ」

 視覚的に表現すれば、両者の間で互いの視線がぶつかり合い、バチバチと火花を散らしているような状況。いよいよ因縁(か?)に決着をつける時。


 しかし、その時……

「うぃぃぃぃぃ~~~~~!!!」

 突如、獣のような叫び声が上がった。そして、カウンターの向こうから、ドタバタと、何かが倒れるような音や、意味不明の叫び声や、「お兄ちゃん!」と意味のある言葉などが聞こえ、やがて、獣とも人ともつかぬ二足歩行生物(つまり御落胤)がカウンターを踊り越え、『子連れマンモス』とブラックシャドウの間に着地した。

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