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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第2章 御落胤クエスト
9/100

マーチャント商会会長

 食事会は、宮殿内の小部屋にて、わたし(+プチドラ)と帝国宰相とマーチャント商会会長で円卓を囲み、(表面上は)和やかな雰囲気で行われた。

 そして、その冒頭、

「本日は、それぞれ忙しいところ、よくぞ参られた。現在、帝国では非常に難しい問題が持ち上がり、『国難』と言ってもよい状況となっておる。帝国最大の経済力を誇るマーチャント商会会長、ルイス・エドモンド・スローターハウス殿、隻眼の黒龍を擁するウェルシー伯、カトリーナ・エマ・エリザベス・ブラッドウッド殿、二人が力を合わせてくれれば、どのような困難も打開することができよう」

 帝国宰相は形どおりに「開会の辞」(のようなもの)を述べた。マーチャント商会会長、ルイス・エドモンド・スローターハウスは、無表情でわたしを眺めている。商売人だけあって、表情から内心を読まれないよう、日夜、訓練を続けているのだろう。会長は、見た目、若者とは言えないが、まだ中年には達していない。年は30代前半くらいだろうか。割と美形、耽美系キャラのような。

 その間にも、料理が次々と運ばれてきた。ツンドラ候のゲテモン屋とは違い(そもそも比較の対象とすべきではない?)、今まで見たことはないが、食欲をそそるものばかり。もっとも、ゆっくりと食事をしようという気にはならないが。


 料理がひととおり出揃ったところで、帝国宰相は杯をさし上げ、

「では、乾杯して、我々の永遠の友情を誓おうではないか」

 しかし、マーチャント商会会長、スローターハウスは杯に手をつけず、

「ちょっと待ってほしい。まず、友情の前提として、『不幸な過去』を清算する必要があると思う」

 帝国宰相はチッと舌打ちして、

「いや、しかし会長、その話は既に……」

「過去よりも未来こそ大切、そう、このことに異論はない。宰相と同意見だ。しかし、『不幸な過去』の清算がその前提であり、そのことに関して、私はなんら制限を受けない」

「それでは話が……」

 どうやら、帝国宰相とマーチャント商会会長の間に、事前の打合せがあったようだ。その時には、どういう形か知らないが、話がまとまっていたのだろう。それを、今になってアッサリ覆そうというのだろうか。

 マーチャント商会会長は、無表情のままに、

「繰り返すが、未来こそ大切、このことにまったく異論はない。ウェルシー伯とは未来志向で話をしたいと思う。しかし、これまで我が社が被った損失については、簡単に水に流すことは許されないと考えている」

 考えてみれば、今まで、メアリーを寝返らせたり、グレートガーデンをメチャクチャにしたり、傭兵部隊を何度となく全滅させたり、マーチャント商会には何かと因縁があった。

 帝国宰相はブスッとして黙り込んでしまった。宰相の目論見が完全に外れてしまったようだ。

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