表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第10章 巨人VS武装盗賊団
86/100

やっぱりあの人

 地上で手を振っているのは、身長2メートル30センチ以上、白髪混じりのオールバックに口髭と顎鬚を伸ばしたマッチョマン。果して……

「お~い、降りてこい。わしじゃ、ピョートル・ミハイロビッチじゃ!」

 思ったとおり、前ツンドラ候だった。話によれば、(バケツかゴミ箱のような)円筒型の兜、灰色のマントの集団が灰色の馬を駆り、巨人の国の領内に侵入しているという知らせを受けたので、近隣の村々が自警団を集めて迎撃に出たとのこと。そこで、「ケンカが三度の飯より好きな」前ツンドラ候も、「助っ人」として、巨人の側に参戦したという。

「実戦は久しぶりじゃ。さすがのわしも、始めのうちは少し緊張したよ」

 前ツンドラ候は額の汗を拭った。今は、「久しぶりに、いい汗をかいた」という感じだろうか。隻眼の黒龍は、数人の巨人と話をしている。どんな話かは分からないが、会話は弾んでる様子。時折、巨人の豪快な笑い声も聞こえてくる。互いに武勇を讃えあっているのだろうか。


 でも、こうなると、必然的に……

「この戦いの死者をねんごろに弔った後、勝利を記念して酒宴を催すことになるのじゃが、どうかね、この前のように、パァーっと、派手に」

 やっぱり、思ったとおり。でも、今は、ブラックシャドウの行方も気になるし、あまりゆっくりしてはいられない。

「ありがとうございます。でも、今は御落胤捜しが何よりも優先されますので、今回は、ちょっと……」

「御落胤? そうか、御落胤か」

 前ツンドラ候は腕を組み天を仰いだ。そして、「あー」とか「うー」とか、頭を上下あるいは左右に動かして、しばらく、うなり声を上げていたが、

「おお、そうじゃ! 御落胤じゃ! 危ない、すっかり忘れておったわ!」

 前ツンドラ候は巨体を揺らしながら、パンと掌を合わせた。

「あの、忘れていらっしゃったというのは?」

「うむ、実は、その後の御落胤の足取りが判明していたのじゃ。いやぁ、わしとしたことが、はっはっは!」

 笑い事ではないと思うけど、それはそれとして……

 話によれば、前ツンドラ候は、わたしたちがクルグールスク村を出発した後も、巨人たちのネットワークや自身の過去の地位に基づくコネクションを利用し、情報を集めてくれていたらしい。その結果、御落胤の居場所が判明したが、わたしに連絡する方法がなかったので、「次に顔を合わせた時に話そう」と思っていたらスッカリ忘れてしまい、今、御落胤の話が出たので思い出したとのこと。

「その後の御落胤つまり、戦士『真正!? 子連れマンモス』一行の旅は、話し出せば長いが、全部聞くかね?」

「いえ、結論の部分だけで結構です」

「そうか、それは残念じゃのう。涙なしでは語れぬ話なのじゃが」

 前ツンドラ候は、さも残念そうに言った。果たして、御落胤はいずこに?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ