巨人VS武装盗賊団
荷馬車の周りに無秩序に群がっていた灰色マントたちは、号令一下、速やかに隊列を整えた。
リーダーらしい男は馬を荷馬車に寄せ、
「今回だけは、特別の恩恵を施してやろう。どこにでも行くがよい。しかし、この次に無礼な態度をとれば、命はないものと覚悟せよ」
そして、灰色マントの集団の先頭まで馬を進めると、
……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……
……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……
例によって、いつもの不気味なコーラスが始まった。心なしか、いつもより力強い響き。テンションが高まっているようだ。
リーダーらしい男は、集団の先頭で剣を抜き、
「全軍、突撃!!!」
灰色マントたちは、おのおの武器を構え、前方の巨人の群れに向かって、灰色の馬を走らせて行く。なかなか壮観な眺めだ。
荷馬車の周囲に灰色マントがいなくなると、ホフマンはバトルアックスを手に取り、
「さて、わしらはどうするかの」
「『どうする』って?」
「このまま退散するのが利口なのじゃろう。しかし、ここはひとつ、巨人に加勢するのも、武人の誉れではないか?」
是非ともそうしたいなら、引きとめはしないけど。ただ、わたしは「武人」ではない。
「わしが武装盗賊団の背後から斬りかかるので、魔法での支援を願いたいのじゃが……」
と、ホフマン。やっぱり、そう来るか……
巨人と武装盗賊団は早くも接触し、戦闘を開始している。背の高い集団と灰色の集団がぶつかり合い、両者入り乱れての乱戦模様。ちっちゃなドワーフがひとりで乗り込んでいっても邪魔になるだけだと思うけど、ホフマンはやる気満々。
「どうじゃ? わしだって、長いこと旅を続け、幾多の修羅場をくぐりぬけてきた」
これだけ自信を持って言えるのだから、並みの実力ではないのだろう。でも、ムチャクチャ強いというほどではなく、せいぜい、フロスト・トロールとタイマンを張れるくらいではないか。そのくらいの腕で巨人と武装盗賊団との戦闘に乱入するのは無謀すぎると思う。だからこそ魔法支援を当てにされているのだろうけど。
プチドラは魔法を使うのが面倒なのか、「ダメダメ」と迷惑そうに首を振っている。でも、それが男子の本懐というなら、遂げさせてやってもよいのではないか。どうなっても知らないけど……




