臨検のような
灰色マントのリーダーらしい男は、「ウーン」と腕を組み、少し考えてから、
「我々の推理に間違いがあるはずがないので、とりあえず、荷馬車を調べさせてもらうぞ。拒むことは許されない。その場合、即座に生存する権利を失うであろう」
「好きにするがいい。ヤツを追ってるいるなら、時間の無駄じゃがな」
「『無駄口は叩かない』と言ったはずだ」
リーダーらしい男が合図を送ると、10人くらいの灰色マントが一斉に馬を降り、荷馬車を前後左右、上下から、くまなく調べ始めた。でも、何も出てくるはずがない。
灰色マントたちは、2、3分後には捜索を止めると、1列に整列して、
「ダメです。ブラックシャドウの影も形もありません。それらしい証拠や手がかりも、発見できませんでした」
「そうか。ということは、ヤツはこの荷馬車にはいないということだな。う~ん、おかしい……」
リーダーらしい男は、まるであり得ない超自然現象に直面しているかのように、困惑して言った。
ホフマンは、あきれたように、
「さっきも言ったじゃろ。『どこかに走り去っていった』と。荷馬車をいくら探しても意味はないわい」
「『無駄口を叩くな』と言ったはずだ。何度も同じことを言わせるな!」
その男は語気を強めた。常に自信過剰、唯我独尊タイプなのだろう。この荷馬車にブラックシャドウがいるという推理に、絶対の自信を持っていたに違いない。ただ、このリーダーが、わたしの顔を知らないっぽいのは、幸いだった。
「君たちの安全が保障されるのは、我々に対して反抗的な態度をとらない場合だけだということを、忘れてはいないか。反抗的な態度かそうでないかの判断権は、当然ながら、我々にある!」
灰色マントのリーダーらしい男を怒らせてしまったらしい。こういうことは、よくあることなのだろう、荷馬車を取り囲んでいる灰色マントたちは武器を構え、いつでも斬りかかれるように準備万端。
その時、ひとりの灰色マントが前方から、「御注進! 御注進!」と、他の灰色マントを押しのけながら、大慌てでリーダーらしい男のところまでやってきて、
「大変です。巨人の集団が、こちらに迫っています!」
耳元でボソボソと話せばよいものを、大声で叫ぶものだから、荷台の上からでも丸聞こえ。話によれば、ラブリンスク村の方から、数十人の武装した巨人の群れが地響きを立てて、こちらに向かってくるとか。荷台の上に立ち上がって遠くを見渡してみると、今まで気がつかなかったけど、確かに、それらしい集団が見える。
リーダーらしい男は、馬上で背伸びしてこれを確認すると、
「ほぉ! 巨人どもめ、我々に挑戦しようというのか!!」
そして、右腕を高らかに差し上げ、
「これより、巨人の群れを迎撃する! 我々の強さを思い知らせてやるのだ!!」
オォォーーー!!!
灰色マントの集団は力強く鬨の声を上げた。




