また出た武装盗賊団
次の日、目を覚ますと、ブラックシャドウは既に朝食を終え、テントを片付けていた。
「ようやく目が覚めたか。食事は先にさせてもらったぞ。悪いが、朝食は荷馬車で食べてくれ」
なんだか少し慌ただしい。昨夜の黒ずくめの男の話が関係しているのだろうか。武装盗賊団に追いつかれる前に目的地に到着するつもりだとしても、巨人の話によれば、ラブリンスク村には巨人しかいないとのこと。一体、何をしに行くのだろう。
「今日はいよいよラブリンスク村だな」
御者台でブラックシャドウが言った。でも、ホフマンは荷台に座り込んで何も言わない。特に事件でもない限りは、無視を決め込んでいるのだろうか。
荷馬車は北の大河の畔をゆっくりと進んだ。ゆっくりと……ただ、今日はひときわ速度が遅いように感じる。
「ブラックシャドウ、もっとスピードは出ないの?」
「すまない。この辺りはぬかるんでいるようだ」
そう言いながら、ブラックシャドウは後方を振り返ったり、左右に顔を向けたり、耳に手を当てたり、とにかく落ち着きがない。怪しいのはいつものことだけど、とりわけ今日は挙動不審。ただ事ではなさそうだ。
プチドラも、4本の足でしっかりと荷台に立ち、耳をぴんと立てて、周囲に気を配っている。
「ブラックシャドウ、一体、どうした……」
そう言いかけたとき、いきなり、ブラックシャドウは荷馬車を停め、御者台の上で立ち上がった。
その時、同時に、遠くから聞こえてきたのは、
……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……
……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……
耳にタコができそうなくらい、何度も聞かされた不気味なコーラス。
「あっはっはっ、ついに追いつかれたようだ」
ブラックシャドウは叫ぶ。追いつかれて「あっはっは」って…… 笑っている場合ではないだろう。
「マズイ、これはマズイぞぉ!」
あまり「マズイ」ように聞こえないのは気のせいだろうか。
ホフマンは、バトルアックスを構えて立ち上がり、
「キサマ! いい加減にしろ!! 冗談が過ぎるぞ!!!」
「済まない。しかし、これは冗談ではないのだ」
ブラックシャドウは動じる様子もなく、ホフマンをにらみ返した。その凍てつくような視線は、傍でいるだけでも寒気がするくらいに……




