薄情な仲間たち
ブラックシャドウは腕を組み、「うーん」とうなり声を上げた。
「まいったな。当然、こういうことは有り得るとの前提だけど、現実化してみるとね……」
巨大な影の正体は、言うまでもなく、巨人。前方から、3体の巨人が特大の棍棒や斧を持って、地面を揺らしながら、ゆったりと近づいてくる。ホフマンはバトルアックスを握りしめ、緊張した面持ちながら戦う準備は万全といった様子。
でも、わたしが思うに…… それほど大変なことではないのではないか?
「巨人なら、フロスト・トロールや武装盗賊団と違って、話せば分かると思うわ」
「話せば分かる……と、それは確かに、話の持って行き方にもよるが、その通りだろう。しかし、誰が話をするか。巨人の国の言葉といえば、格変化が6通りもあって……」
「わたしがなんとかするから。あなたたちは、ここを動かないでね。ラバが巨人に脅えて暴れださないように、しっかり抑えていて頂戴」
わたしはプチドラを抱き、荷馬車を降りた。そして、巨人の足元まで、小走りに駆ける。当然ながら、巨人と話をするのは、わたしではなくプチドラ。
「Зλдψεрζаζвстψεвαуξй!」
巨人はわたしを目に留めると、大声で叫んだ。挨拶だろうか。プチドラも同じように、
「Зλдψεрζаζвстψεвαуξй!」
すると、3人の巨人は、わたしを取り囲むように腰を下ろし、質問だろうか、先を争うようにこちらに話しかけた。わたしにはサッパリ分からないが、プチドラは、ペラペーラペラペーラと、母国語を話すように流暢。会話は弾んでいるようで、時折、巨人の口からは、「ワッハッハ」と、豪快な笑い声が漏れる。さらに、プチドラが何を言ったのか分からないが、巨人たちは、わたしの顔をまじまじと見つめ、「ホォー」と、感服してるような雰囲気。
ちらりと後方に目をやると、ブラックシャドウもホフマンも、荷馬車の上から遠巻きにこちらを眺めている様子。交渉に失敗して巨人が暴れだした場合、近くにいれば助からないだろう。「ここを動かないで」とは言ったけれど、もう少し心配してくれてもよさそうなものだ。薄情な連中には違いない。ただ、この場合に限って言えば、実際に喋っているのはプチドラだから、近くにいられると、逆に困るということはあるが……
しばらくすると、巨人たちは立ち上がり、
「Дψо свαиξдζμаξнτиζя」
クルリとこちらに背を向け、引き返していった。すると、プチドラも同様に、小さな手を振って、
「Дψо свαиξдζμаξнτиζя!!!」
巨人たちは何度かこちらを振り返り、大きな手を振って、何やら大きな声を立てている。何を言っているのか分からないが、敵対的な感じはしない。一応、これで一件落着と見てよいのだろう。プチドラは、ホッと胸を撫ぜ下ろし、Vサインしている。




