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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第8章 海賊討伐依頼
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再び港にて

 荷馬車は進む。後方からは、灰色マントの数名の武装盗賊団が、一定の距離を保ちながら追跡中。先刻から、なんとも言えない緊張感を強いられる場面が続く。でも、ブラックシャドウはそしらぬ顔、ペースを乱さずに荷馬車を走らせている。また、ホフマンは入念にバトルアックスを磨いている。(あり得ないようだが)そちらは本当に気付いていないようだ。

 やがて、荷馬車は町を東西に貫く北の大河の畔を通り、「北の海鮮横丁」に到着。ここは今日も盛況で、荷馬車のスピードがガクンと落ちた。

 ちらりと後方を振り返ってみると、武装盗賊団の周囲はぽっかりと穴が開いたように人通りが途絶え、自らの位置がバレバレ。でも、武装盗賊団は、そんなことはまるで関係ないように、荷馬車の後方30メートルくらいの距離でピッタリと追跡を続けている。

「本当に大丈夫かな……」

 プチドラはわたしの肩に乗っかり、心配そうにささやいた。

「どうかしら。大丈夫そうには見えないわね。ブラックシャドウは自信たっぷりだけど……」

 ブラックシャドウは『北の海鮮横丁』の人波を縫うように、ゆっくりと荷馬車を走らせている。武装盗賊団がいかに非常識な集団としても、まさか、こんな雑踏の真ん中で攻撃を仕掛けてくることはないと思うけど……


 やがて、馬車は「北の海鮮横丁」を抜け、漁港に到達。いくつも桟橋が海に突き出し、漁船が何艘も係留されていた。追われているせいだろうか、黒っぽい海水面と灰色の空は、いつも以上に陰鬱な感じがする。

「さあ、着いたぞ」

 ブラックシャドウは荷馬車を降りた。すると、武装盗賊団の面々は、大慌てで付近の物陰に身を隠す。あれだけ丸分かりでも、気付かれていないと思っているらしい。

「ブラックシャドウ、これからどうするの?」

「港は何をするところか、説明するまでもないと思うが」

 ブラックシャドウは氷のような視線でわたしを一瞥すると、近くに歩いていた漁師を捕まえ、

「舟を貸してくれ。イヤとは言わさん。しかし、使用料は前金で支払う」

 そして、金貨を何枚か握らせた。

 漁師は、ブラックシャドウのただならぬ気配に脅えたのか、

「はっ、はい、お貸しします。お貸ししますとも……」

 わなわなと体を震わせながら、わたしたちを自分の舟まで案内した。舟は、わたしたちが乗れば満員になるくらいの(「ボート」と言ってもよい)非常に小型のもの。ブラックシャドウは舟から漁具を降ろすと、

「おい、漁師さんよ、我々は、これから、沖合いの島まで海賊退治に行く。しかし、このことは、誰にも言ってはならんぞ」

「分かっております。けっして口外しませんから」

 漁師はおずおずとして言った。ただ、この場では「口外しない」と言っても、誰かに脅されたら、簡単に白状してしまうのではないか。

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