武装盗賊団が去って
ひととおり食事が済むと、武装盗賊団第5装甲騎兵軍の面々は、再び(バケツかゴミ箱のような)円筒型の兜をかぶって店先に整列した。
「腹も一杯になったことだし、これより、我らが仇敵ブラックシャドウの捜索を再開する」
リーダーが号令をかけると、全員、ローマ式に右手を高く上げて「オー」と雄叫びを上げ、それぞれ自分の馬に乗った。そして、ある者はラッパを吹き、別の者はドラム(太鼓)を叩き、全員で声を合わせ、
……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……
……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……
例によって不気味なコーラスを奏でながら、暗くなった通りを月明かりに照らされながら、どこへともなく走り去っていった。
コーラスが遠ざかると、
「やれやれだね」
プチドラはわたしの耳元でささやく。
「一時はどうなることかと思ったけど、なんとか無事に済んでよかったわ」
「本当に無事ならいいけど…… でも……」
プチドラは心配そうな表情を浮かべている。ブラックシャドウの話を振られた時には適当に誤魔化したつもりだけど、本当に誤魔化しきれたかどうか。考えても仕方のないところだけど、腕を組み「う~ん」と考え込んでいると、
「あぁ~ よく寝た……」
ホフマンが幸せそうに寝ぼけ眼をこすり、顔を上げた。
「おお、おまえさん…… 戻っておったか。ところで、ブラックシャドウはどこにいったかのう?」
このヒゲオヤジは…… わたしは思わず苦笑した。ホフマンは、わたしと自分自身のほかに客のいない店内を、不思議そうに見回している。
「カレは所用があるとかで出かけていきました。わたしもこれから部屋で休もうと思うのですが……」
「そうかい、それは残念じゃが…… まあ、いいか。ひとりで飲む酒も悪くないな」
ホフマンはまだ飲み足りないらしい。萌え系メイド服のウェイトレスを呼び、メニューを指差して酒を注文している。プチドラと飲み比べをさせてみても面白そうだ。自称「アルコール大王」のプチドラも緊張が解けたせいか、口を開けてよだれをたらしているが、そんな場合じゃないと思う。わたしはプチドラの口を押さえ、ホフマンに挨拶をして、自室に戻った。
ドアのカギを開け、部屋に入ると、
「げっ!!!」
わたしは思わず声を上げた。そこには意外な人物が(でも、ストーリーの流れ的には、全然、意外ではなかったりするが)……




