武装盗賊団の目的
灰色マントの男は苦笑しながら、
「ユーモアがお好きかな? 『ブラックシャドウ』と『ブラックウィドウ』とは、絶妙とは言いにくいが、一応、味があるというか、なんというか……」
ギャグはあまり受けがよくなかったようだ。ともあれ、わたしは畳み掛けるように、
「で、そのブラックウィドウ……ではなく、ブラックシャドウが、どうしたと???」
なんだか無理矢理のような気もするが、対して、灰色マントの男は極めて自然体に、
「なんと言うかね…… ぶっちゃけた話、ヤツは我々の仇敵なのだよ。要するに、あのヤロウだけはブッ殺さずにはおけないというかね。詳細を話すわけにはいかないが、我々の当面の目標としては、ヤツをボコボコにしてブッ殺して小便を引っ掛けて……というような下品なことは言うまいが、いや、失礼……」
「申し訳ないのですが、全体像が見えてこないと言いますか…… あなた方と、そのブラックシャドウとの間に、一体、どのようなことが?」
すると、灰色マントの男はハッとして、少し考え込み、
「いや、そう言われてみると…… 理性的に考えれば、ある意味、愚かな、あるいは馬鹿な話かもしれない。しかし、我々のメンツのためには、馬鹿な話であろうが阿呆な話であろうが、受けて立たざるを得ないというわけなのだ」
コミカルな会話とは裏腹に、灰色マントの男は透徹とした眼差しでわたしを睨んでいた。表と裏が一致しない策士タイプだろうか。なんとなく、やりにくそうな相手……
わたしは、とりあえず話題を変え、
「そういえば、最近、グレートエドワーズバーグ近くで海賊がのさばっているという話がありまして、聞くところによれば、「カバの口」と海賊の『天下分け目の合戦』みたいな噂もあるのですが……」
すると、灰色マントの男は、腹を抱えるようにして笑い声を上げ、
「ははは、そのことか…… いや、失敬……」
と、しばらくの間、笑い転げていたが(一体、何が面白いのだろう?)、
「いや、申し訳ない。実は、その仕事は、我々とは別のセクション、武装盗賊団の第7から第12あたりの諸部隊が管轄しているはずだ。確か、この数日中には総攻撃という話だが、詳しくは知らんよ」
ということなら、この部隊は、部隊ごと閑職に回されているような気がしないでもないが、
「つまり、あなた方の部隊は、ただ、ブラックシャドウを捕まえるという?」
「そうだ。結論的にはね。ただ、ヤツを捕えることは、1万の軍勢を皆殺しにするよりも難しいことなのだ。だから、我々のような精鋭部隊が、ある意味、『恥を忍んで』と言うと大袈裟かね。分かってもらえるかな?」
「ええ、まあ、なんとなくですが……お察しいたします」
なんだか分かったような分からないような……




