指名手配
武装盗賊団第5装甲騎兵軍の面々が席につくと、いわゆる「萌え」を意識したメイド服のウェイトレスたちは、粗相がないよう細心の注意を払いながら、注文を取り始めた。居合わせた冒険者たちは、大急ぎで食事を食べ終えると、次々と逃げるように店から去っていく。武装盗賊団は、見た目、それほど怖そうな感じがしないが、一般的には、やはり恐れられているようだ。やがて、1階では、わたしと眠っているホフマン(特別に鈍感なのだろうか)のほかは、武装盗賊団の連中ばかりになってしまった。
わたしの前に座っている灰色マントの男は、鷲のような目でわたしをにらみ、
「あなたは恐ろしくないのかね。こう見えても、我々は武装盗賊団なのだが……」
「恐ろしいのですが、分かりませんか?」
わたしはそう言って微笑みかけた。
灰色マントの男は、一瞬、首をかしげたが、すぐに笑い出し、
「はっはっはっ、面白いことを言う。本来は、我輩が『反抗的な態度』と認定すれば、即、打ち首だが、今日は特別に許そう。我輩は寛大だからな」
この男、そう言いながら、ひとりで悦に入っている様子。自分に酔いやすいタイプなのだろうか。しばらくすると、オヤジ(宿のオーナー)が、皿一杯に海産物を盛りつけ、テーブルに歩み寄った。
すると、男は懐から似顔絵を取り出してオヤジに示し、
「実は、我々は、この男を捜しているのだ。男の名は『ブラックシャドウ』。フリーのエージェントだ」
瞬間、わたしの身体は固くこわばった。わたしとブラックシャドウがパーティーを組んでいたことは、オヤジも知っている。ここでオヤジに喋られたら、こっちの身も危うい。ところが、オヤジは似顔絵を一瞥すると、
「ふむ、悪いが、記憶にないな。……で、この似顔絵をどうするかね? 壁にでも貼り付けて懸賞金をかけるつもりなら、その分の手数料をもらわねばならんが」
「いや、そんな面倒なことをする気はない。オヤジ、貴殿がこの男を知っているかどうか、尋ねただけだ」
「さあね…… さっきも言っただろ。『物覚えの悪さは親譲りだ』と」
このオヤジ、一体、何を考えているのだろう。「みかじめ料」を払って「カバの口」の庇護を受けているのであれば、「カバの口」に対して不利益なことはしにくいはずだが。まさか、ブラックシャドウやわたしをかばおうとする気はないだろうし(恩を売っても常に見返りを得られるとは限らない)……
「そうか、知らんなら仕方がないな。それでは、あなたはどうかな? このところ、このグレートエドワーズバーグの町を中心に活動しているらしいのだ。どんな些細なことでもよい。心当たりがあれば教えてほしい」
灰色マントの男は、鷲のような目を光らせ、わたしの目の前に似顔絵を広げた。
「は……はい、ブラックウィドウですか? あら、違う?? ブラックシャドウ???」
ぎこちないながらも、思わず、ボケをかましてしまった。




