表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第7章 北の町の風景
59/100

宿のオヤジと武装盗賊団

 ……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……

 ……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……


 コーラスはますます大きくなっていく。歌声に混じって、馬のいななきやひづめの音も響いてきた。すぐそこまで迫っているのだろう。

 やがて、コーラスはピタリと止んだ。こうなると、やはり……

 入り口のドアが静かに開き、

「おい、オヤジ、久しぶりだな」

 思ったとおり、(バケツかゴミ箱のような)円筒型の兜をかぶり、灰色のマントを身に着けた集団が、ゾロゾロと店内に入りこんできた。


「久しぶりって……本当にそうか? それはともかく、他の客の迷惑になることはやめてくれよ」

 カウンターから、もっさりとしたオヤジ(店のオーナー)が、ゆったりと身を乗り出した。気が大きいのか鈍感なのか、まったく動じている様子はない。

「ところで、あんたら所属はどちらかね。みんな同じコスチュームだから、区別がつかないんだよな……」

 オヤジは眉間にしわを寄せ、独り言のように言った。動じていないどころか、余裕さえありそうだ。

「我々は武装盗賊団第5装甲騎兵軍だ。最近何度も来ているだろう。本当に忘れっぽいオヤジだな」

「もの覚えの悪さは親譲りでね。その装甲騎兵の皆さんが、一体、なんの用で?」

「客に向かって『なんの用』はないだろう。とりあえず、食事をさせてほしいのだ」

 オヤジはいぶかしげに武装盗賊団第5装甲騎兵軍の面々を見回すと、

「客なら適当に空いてる席に座ってくれ。すぐ注文取りにいくから」


 武装盗賊団第5装甲騎兵軍は、総勢20人ばかり。空いているテーブルはすぐに埋まり、何人かは他の客と相席になった。わたしのテーブルにも灰色マント(オヤジと話をしていた男)がやってきて、

「よろしいか?」

「どうぞ。わたしは別に構わないけど」

「ありがとう。では、失礼して……」

 灰色マントの男は、腰掛けると、(バケツかゴミ箱のような)円筒型の兜を脱いだ。彫りの深い顔に、ピンと上を向いた口髭が特徴的だ。歳は50前後だろうか。なかなか渋い。何気なく男の顔を眺めていると、

「どうしたのかな? 我輩の顔に、何か?」

「いえ、別に……」

 武装盗賊団は、ブラックシャドウからとんでもない無法集団と聞かされていたが、実際のところはどうなのだろう。意外と紳士的なところがありそうな感じもある。ともあれ、連中がここにいるしばらくの間、連中を観察することにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ