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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第7章 北の町の風景
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ブラックシャドウと黒ずくめの男

 ブラックシャドウ自身も謎の多い男だけど、さらに輪をかけて、新たに謎の男が出現。でも、こういう場合は、慌てず騒がず、

「プチドラ、頼むわ。とりあえず盗み聞きを」

 わたしは静かにプチドラを床に下ろした。プチドラはスッと姿を消す。どんな話なのだろう。わたしは物陰に隠れ、こっそりとブラックシャドウと黒ずくめの男を観察。

 しばらくすると、ブラックシャドウが黒ずくめの男の肩をポンとたたき、

「それでは、また。今度は確定的かつ決定的な情報を頼む」

 すると、男は無言で体を起こし、矢のように店から去っていった。

 程なくして、わたしの右肩が急に重くなって、

「マスター……」

 と、プチドラが姿を現した。

「どうだった? 面白い話は聞けた?」

「いや、面白いかどうか。あのブラックシャドウ、予想どおりの食わせ者だったよ」


 プチドラによれば、ブラックシャドウも黒ずくめの男も、誰かの依頼によって御落胤の行方を追っているとのこと。その「誰か」とは何者か、気になるが、話の中では単に「クライアント」としか言ってなかったらしい。百鬼夜行の帝都の政治状況だから、御落胤を追うのは帝国宰相ばかりと限らない。面従腹背を決め込んだアート公、ウェストゲート公、サムストック公か、一発逆転を狙ったドラゴニア候か、取引材料がほしいマーチャント商会か、怪しいのを挙げていくときりがない。

 さらに、ブラックシャドウが「ハート型の焼印とは、あの爺さん、やってくれるね」と言うと、黒ずくめの男が「ええ、でも、今は逃れています。とりあえず目星がついた我々の方が有利です」と応えたとか。帝国宰相は、確か、「御落胤の背中にはハート型のあざがある」とか言ってたけど、このことだろうか。

「帝国宰相は、きっと、かなり昔に御落胤の足取りをつかんでいたんだ。何かの場合に備えて、ハート型の焼印を押して自分の監視下に置いた。でも、その後、経緯は分からないけど、逃げられちゃったんじゃないかな」

 と、プチドラ。やっぱり、あの爺さん、裏では相当にえげつないことをしていたようだ。でも、せっかく捕まえても逃がしてしまう辺り、帝国宰相らしい間抜けぶりではあるが。

 プチドラは、周囲を油断なく見回すと、さらに声を低くして、

「それと、もうひとつ、ブラックシャドウの任務には、御落胤の行方を追うだけではなく、ボクたちの監視も含まれていたみたいだよ」

 あまりぞっとしない話だけど、驚きはない。帝都を発つ頃から、プチドラが「誰かに監視されているような」と言ってたのは、ブラックシャドウやその仲間がわたしたちを見張っていたのだろう。

 それよりも気になるのは、黒ずくめの男が「とりあえずは目星がついた」と言ったこと。ならば、ブラックシャドウと一緒にいれば、いずれ御落胤を発見できることになるが、うまくいくかどうか(いろいろな意味で)……

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