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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第7章 北の町の風景
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獣か人か

 ホフマンが取り押さえた小型二足歩行生物は、よく見ると、一応、人の子(男の子)だった。歳は小学生くらいだろう。でも(少し言いにくいけど)、知性のなさが顔に現れているというか……

 その子は捕獲された獣のように手足をばたつかせている。しかし、ホフマンの腕に押さえつけられては、どうにもならない。

 その時、入り口の扉が開き、

「ただいま」

 やはり萌え系のメイド服を着た少女が、重そうな荷物を抱えて入ってきた。この店に来たときに、いつも部屋まで案内してくれた少女だ。名前は、え~っと……、なんだったっけ?

「アンジェラちゃん、おかえりなさい」

 ウェイトレスが言った。そうそう、確か、「アンジェラ」という名前だった。ウェイトレスは、急いでアンジェラから荷物を受け取ると、ホフマンが男の子を押さえつけている現場にチラリと目をやり、

「丁度いいところに帰ってきてくれたわ。お兄ちゃんが大変なことになってるのよ」

 すると、アンジェラは「アッ!」と声を上げ、

「申し訳ありません、兄が、また粗相を…… 本当は、悪気はないのです。ただ、ちょっと……」

 と、頭を何度も下げ、平謝りに謝った。そして、

「お兄ちゃん、行きましょう」

 と、アンジェラは、その「お兄ちゃん」を連れ、カウンターの奥に消えていった。不思議なことに(それほど不思議でもないかもしれないが)、「お兄ちゃん」は、アンジェラに対しては実に聞き分けよく、言うことに素直に従っていた。


 ウェイトレスは、「はぁ~」とひとつ、大きなため息をつくと、

「申し訳ありませんでした。もし、お怪我や荷物の破損などがありましたら……」

「いや、別にどうということはない。ほんのちょっぴり、驚いたがな」

 ホフマンは事もなげに言った。そして、にわかに声を小さくして、

「ところで、あの子供は、なんじゃね?」

「あの子ですか。それはちょっと、いえ、非常に言いにくいのですが…… でも、やっぱり、こんな迷惑をおかけした以上は……」

 しばらくの間、ウェイトレスは躊躇していたが、ようやく決心がついたのか、

「実はですね、アンジェラちゃんの双子の兄が、先ほど暴れていた、あの『お兄ちゃん』で……」

 あの利発そうなアンジェラに、いかにも○○○な兄がいたなんて、正直、ビックリ。しかも、双子とは、これ、いかに? まるっきり似ていないのは、二卵性双生児だからだろうか。

「『お兄ちゃん』は、実は、知的障害でして、時々、あのように暴れだすことがあるのです。そうなると、アンジェラちゃん以外に彼を大人しくさせることはできません。このことは大きな声で言えることではなく、つまり内密にお願いしたいのですが……」

 ウェイトレスは腰をかがめ、哀願するように言った。

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