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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第7章 北の町の風景
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とりあえず休息を

 わたしたちは北門でそれぞれ通行証を見せ、城門をくぐった。いろいろあったけど、どうにか、全員無事に帰還することができた。

ブラックシャドウは馬車を停め、

「ふたりとも、お疲れさま。今回はガセネタをつかまされて残念な結果だったが、これからどうするかね。直ちに情報を仕入れて、今日中に次なる捜索の旅に出発するか、とりあえず今日は休むか……」

 なんとも気の早い! わたしは声を上げそうになった。でも、時刻はまだ昼を少し過ぎたくらいだから、あながち無茶な相談でもない。

「まあまあ、そう慌てることはなかろう。それに、すぐに新しい情報が手に入るかどうか分からんぞ」

 ホフマンは、少し間延びした口調で言った。

 わたしもホフマンに同意。その意味を込めて何度かうなずくと、

「分かった。それでは、今日はゆっくり休み、明日、捜索を再開することにしよう」

 こうなることを予想していたのだろう、ブラックシャドウは極めて事務的な調子で言った。

 荷馬車は大通りを抜け、下町を横切り、さらに下等な通りを……それはともかく、やがて、荷馬車はクラーケンの宿の前に停車した。

 ブラックシャドウは御者台から顔を後ろに向け、

「私はこの荷馬車をなんとかしてくるよ。ふたりは先に宿で休んでいてくれ」

「それはかたじけない。よろしく頼むよ」

 ホフマンは機嫌よさそうに荷馬車を降りた。

 宿の前につけてくれるなら、クラーケンの宿ではなく、もう少し小綺麗なところにしてくれてもよかったのに……

 もっとも、これから新たに宿を捜そうという気にはならないが。


 クラーケンの宿の入り口の扉を開けると、例によって、

「いらっしゃいませ。申し訳ありませんが、料金は前払いでお願いいたします」

 この前と同じように、(いわゆる「萌え」を意識した)メイド服のウェイトレスが笑顔で迎えてくれた。ただ、まだ昼過ぎのせいか、1階には、わたしたち以外に客はいない。ウェイトレスも、今はこのひとりだけ。

 入り口で宿泊料を支払うと、

「うぅうぅうぅ~~~」

 不意に、カウンターの向こうから、人とも獣ともつかない唸り声が聞こえた。さらに、ドタンバタンと、何かを倒すような音がして、やがて、

「うぃぃぃ~~!」

 小型の二足歩行生物が(一応、「人」のようには見えるが)カウンターから飛び出し、ホフマンに飛びかかった。一瞬、ホフマンは驚いた様子を見せたが、「真の強さを求めて旅をしている」だけあって、すぐに体勢を立て直し、がっしりとした両腕で、簡単にその生物を虜にしてしまった。

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