武装盗賊団
不気味なコーラスは、一段と大きく響いてきた。
……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……
……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……
ブラックシャドウは後方を振り返ると、
「そろそろ限界か。もう少し遠くまで離れたかったが……」
そして、バックパックを脇に置き、地面にピッタリと体をつけた。さらに、わたしとホフマンを見上げ、
「2人とも、ボケッと突っ立っていると、ヤツらに見つかるぞ」
「やれやれ……」
ホフマンは、ブラックシャドウと同様、地面に伏せた。
でも、わたしの場合は、そんな、土にまみれるようなことはしなくてもよくて、
「プチドラ、頼むわ」
「任せて」
その瞬間、わたしとプチドラ及び風呂敷包みの姿がスッと消えた。つまり、魔法で姿を隠したということ。
でも、ブラックシャドウにもホフマンにも、声を上げる余裕はなかった。というのは、
……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……
……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……
丁度その時、不気味なコーラスの主が姿を現したから。
その集団とわたしたちとの距離は、せいぜい30メートル。偽装工作が見破られた場合、姿を消しているわたしとプチドラはともかく、ブラックシャドウとホフマンは危機的状況に陥るだろう。
でも、その「武装盗賊団」、どんなにすごいのかと思ったら……なんのことはなかった(というと語弊があるかもしれないが)。武装盗賊団とは、以前にも見かけた灰色マントの集団、すなわち、見た目はコミカルに、(バケツかゴミ箱のような)円筒型の兜をかぶり、灰色のマントを身に着け、灰色の馬に乗った集団だったから。
「こんなところにラバの死体と壊れた荷馬車とは、これいかに?」
「おおかた、山賊にでも襲われたんでしょう」
「いや、それにしては不自然なじゃないか?」
20人程度の灰色マントの集団は馬を降り、壊れた荷馬車を取り囲んでいる。円筒型の兜の目の部分にはスリットが開き、いかにも「悪者」か「敵キャラ」といった雰囲気。
やがて、灰色マントの集団は荷馬車の周囲の捜索を始めた。繰り返しになるが、わたしたちと灰色マントの集団との距離は、せいぜい30メートル。少しはマズイか……




