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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第6章 フロスト・トロールの住処
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山道の不気味な調べ

 地獄谷での御落胤捜索は、結局、徒労に終わった。いい加減な情報屋め、「時間と予算を返せ」と言いたくなる。でも、ブラックシャドウとホフマンは、腹を立てていないし落胆してもいない。

 ホフマンは、事もなげに言う。

「情報が『当たる』確率は3分の1程度かな。まあ、気長に頑張ることじゃ」

 なんとものんびりと、また、ゆったりしたことだが…… でも、この世界では、これくらいが標準なのだろう。

 わたしたちは荷馬車に乗り、来た道を、今度は反対方向に戻り始めた。


 荷馬車は山道を進む。周囲には、(当然だけど)来た時と同様、針葉樹の森が広がっている。ブラックシャドウによれば、モンスターや山賊に襲われる可能性があるので、一応、臨戦態勢でいる必要があるとのこと。でも、実際にいるかどうか分からない敵に備えるというのは、それだけでも神経が疲れる。いつもなら隻眼の黒龍に乗って、さっさと引き揚げるのだが……

「まあまあ、マスター。普通に旅をするなら、こんなものだよ」

 プチドラは、わたしの耳元でささやいた。言われなくても、理屈としては分かってるけど、ガセネタをつかまされたこともあるし、なんだかモヤモヤモヤッとしたような気分。

 日は西に傾き、もともと薄暗い森は、さらに暗くなっていた。できれば、日没前に山道を抜け、街道に出ておきたいものだが……

 御者台のブラックシャドウは、ラバに鞭を当て、

「このペースなら、なんとかなりそうだな」

 ブラックシャドウは、当てになるかどうかは別として、楽観しているようだ。


 その時、プチドラがわたしの肩に飛び乗り、耳をピンと立て、唸り声を上げた。なんだろう。また、誰かに監視されている気配を感じたのだろうか。

「ちっ! マズイことになった」

 さらに、ブラックシャドウも感情のこもった声を上げた。これは、今までになかったことだ。

 そうこうしているうちに、前方から、


 ……ぺ……れ……ぎ……よ…… ……ぺ……れ……ぎ……よ……

 ……ぺ……れ……ぺ……れ…… ……ぺ……れ……さ……ぁ……


 初めて耳にする言葉がメロディーに乗って流れてきた(ちなみに、ひらがな表記すると、上記のごとく)。コーラスのようだ。管楽器や打楽器の音なども聞こえる。地の底から響いてくるような感じがして、かなり不気味。

「これは、しかし…… くっ! どうしたものか!!」

 ブラックシャドウは狼狽していた。顔を見れば、ありありと分かる。これは、ただ事ではなさそうだ。

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