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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第6章 フロスト・トロールの住処
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御落胤はどこ?

 わたしたちは(本当はプチドラの)光の球で周囲を照らしながら、御落胤の捜索を始めた。集落には、食糧となった犠牲者の人骨、用途不明の金属片、燃え残った木片などが散乱している。このゴミゴミした状況、わたしならとても住む気になれないが、フロスト・トロールには気にならないのだろう。

 焼け焦げた(フロスト・トロールの)肉の臭いが鼻を突く。でも、とにかく今は、御落胤が、その仲間に入っていないことを祈るだけだ。

「集落の中ではなさそうだな。死体はすべてフロスト・トロールのものだ」

 ブラックシャドウが言った。とりあえず、ひと安心。ということは、どこかに都合よく捕虜収容所があり、そこに御落胤が囚われているのだろうか。あるいは、もともとガセネタだったのか。


 やがて、空が白みだしてきた。夜が明けてきたようだ。それにつれ、集落の様子が、よりハッキリとしていく。それほど大きくはない盆地には、住居の残骸や焼け焦げたフロスト・トロールの死体が転がっており、盆地の外延部(つまり山の斜面)には、大きな横穴がいくつか口を開けていた。

「御落胤がいるとすれば、このうちのどれかだろう」

 ブラックシャドウは横穴のひとつをのぞき込んだ。でも、中がどうなっているのかは、暗くてよく分からない。

 わたしは、さも自分の魔法のように、光の球で横穴の中を照らす。すると……

「うっ!」

 わたしは思わず声を上げた。横穴には、人の形をした薫製のようなものが、幾重にも積み重なっていた。

 ブラックシャドウは、落ち着いて横穴の中を見回すと、ひと言、

「ここは保存食の貯蔵庫のようだな」

 別の横穴には、発酵食品(大きな甕に死体を詰め込み発酵させたもの)がすさまじい臭気を放っていたり、普通に穀物や木の実などが(分別されずに)積み上がっていたり、何が出てくるのか予想がつかない。

 しかし、御落胤の(と言うか、生き物の)姿は、どこにもなかった。


 ブラックシャドウは腕を組み、

「う~む、これだけ探しても見つからないということは……」

「やっぱりガセネタ? でも、一体どんな脈絡で、地獄谷と御落胤が結びついたのかしら」

 最初から無理がありすぎる話のような気がしていたけど……

 ブラックシャドウは横穴のひとつを指差した。そこは発酵食品が保管されていたところ。ブラックシャドウによれば、甕の中にはバラバラにされた子供の体の一部が満杯になるまで詰められていたということで(本当に、よく観察している)、彼の見立てによれば、「『近隣の村々を襲撃して子供をさらっていった』という話に尾ひれがついて、御落胤になったのではないか」とのこと。尾ひれがつくにしても、度を越えているような気がするが、「このくらいの不一致ならば、往々にして、あること」らしい。

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