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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第6章 フロスト・トロールの住処
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戦闘(乱戦)

 ホフマンが斬り込んで戦闘が始まり、動きが激しくなった。こうなると、月明かりだけでは不十分に思える。

「もう少し、明るくならないかしら。照明弾みたいに、何か、こう……」

 プチドラは「分かった」というように小さくうなずくと、口をモゴモゴと動かした。すると、サッカーボール程度の大きさの光の球が何個か出現し、街灯のように戦場を照らした。

「うん、これで、よく見えるようになったわ」

 動き出したフロスト・トロールは、全員で10体くらい。ホフマンは必死にバトルアックスを振るっている。体の大きさの違いを考慮すれば、善戦していると言えよう。

 他方、ブラックシャドウは、当然のように無事だった。素早い動きでフロスト・トロールの攻撃をかわしながら、(おそらくは急所を狙って)ショートソードで突いている。

「プチドラ、お願い。今度はピンポイントにね」

 これは、わたしにも、フロスト・トロールを目覚めさせて話をややこしくした責任みたいなものがあるだろうから。

 プチドラがブツブツと短い呪文を唱えると、3体のフロスト・トロールが、いきなり炎上を始めた。フロスト・トロールは、もがき苦しみながら、やがて、真っ黒焦げの焼死体に。

「プチドラ、あなたも意外と、えげつないことするのね」

「いや、なんというか…… フロスト・トロールの場合、体の外部から通常の火の玉をぶつけるくらいでは、効き目が薄いから」

 プチドラはバツの悪そうな顔をしているが、戦いの美学はホフマンだけで十分だろう。

「いいわ。この調子で、続けて」

 プチドラは小さくうなずき、呪文を唱えた。すると、更に3体のフロスト・トロールが炎上を始めた。そして、残りをホフマンとブラックシャドウが片付け、戦闘は、結果的には、こちらの圧勝で終わった。


「魔法を使うのは構わないがね……」

 戦闘が終わると、ブラックシャドウが言った。作戦を台無しにされ、あまつさえ自身も味方に殺されかけたのだから、怒り心頭かと思ったら、意外にも冷静。氷のように冷たい目でわたしを見下ろした。

「フロスト・トロールを起こしちゃったみたいなのよ。何体か、住処から出てきてたわ。」

 これは、もちろん、見え透いた大ウソ。でも、ホフマンはわたしに調子を合わせ、

「そうじゃ。危ないと思って、わしが斬りこみ、魔法で援護をしてもらうことにした」

 ホフマンは、あからさまに「してやったり」という表情。普通、これだけコケにされたら、怒り出すのは当然の権利だろう。

 でも、ブラックシャドウは、あくまでも冷静で、

「そうか。助けてくれたなら、感謝する」

 そして、この件については、一応、これで決着し、ようやく本来の目的、御落胤の捜索となった。でも、大丈夫だろうか(正直、あまり大丈夫な気がしないが)。わたしとしては、今は、御落胤が魔法攻撃の巻き添えで死亡していないことを祈るだけ。

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