ド派手な大爆発
ブラックシャドウは、掘っ立て小屋か竪穴式住居のような住処に音もなく忍び込み、気付かれることなく、次々とフロスト・トロールを殺害していった。実に手慣れた様子、さすが暗殺のプロフェッショナル。
「心が痛むわい。不意打ちは否定せんが、こんな一方的な殺戮を認めるわけには……」
ホフマンがポツリと漏らした。正々堂々と戦わなければ気が済まないタイプだろうか。でも、武器を振るって戦いたいなら、それなりに方法もある。
わたしはプチドラを突っつき、
「お願いがあるのよ。え~っと……」
「はい?」
プチドラは、困惑したような表情を浮かべている。
「なんとかならないかしら。とりあえず、こう…… つまり、ブラックシャドウが1人で目立つことのないような、何かうまい方法みたいな……」
「???」
プチドラも、わたしの意図を把握しきれない様子。ただ、それも当然と言うべきか。わたしの心の中でも、完全に考えがまとまっていないのだから。
「とにかく、ブラックシャドウの思い通りにさせないように、とりあえず一発、核爆発!」
プチドラは、わけが分からないのだろう、ポカンと口を開け、「ハテ」と首をひねった。
わたしは、さらに言葉を続け、
「なんでもいいけど、とりあえず、ブラックシャドウの『1人勝ち』だけは阻止する方向で、たのむわ」
プチドラは、(わたしの話が)分かったのか分からなかったのかは分からないが、一応、大筋では理解したようで、
「なんだかなあ…… でも、本当に、いいの?」
「派手にズドーンと、やっちゃって。ブラックシャドウが巻き添えになっても構わない。この地獄谷のフロスト・トロールが全滅するくらいの、ド派手なやつを、お願い」
「う~ん…… 重ね重ね、なんだかなあ……」
プチドラは、本意ではない様子ながら、ブツブツと呪文を唱えた。すると、程なくして、天から幾筋もの電光(雷光)が地上に降り注ぎ、一瞬のうちに、フロスト・トロールの住居をすべて焼き払ってしまった。
「やった!」
声を上げ、自分1人でVサインをしたのは、しかし、束の間だった。意外としぶといフロスト・トロールは、「ウガガガガー」と、電撃でダメージを負いながらも、真っ黒に焼け焦げた住居の残骸の中から立ち上がった。
「こっ、これは、一体!?」
ホフマンは、事態をよく把握できないらしく、巨大なバトルアックスを握りしめ、まごまごしていたが、
「とりあえず、力を振るうなら、今のうちでしょう」
そう促すと、ホフマンはハッとして無言でうなずき、バトルアックスを振り回し、フロスト・トロールに斬りかかっていった。




