パーティー結成
翌朝、わたしはいつもより早めに起きると、手早く着替えを済ませてプチドラを抱き、貴重品を持って1階に下りた。丁度朝食の時間らしく、食堂は、バックパックを背負った冒険者で混み合っている。食べてからすぐに出発しようというのだろう。
「よぉ、こっちだ!」
わたしを呼ぶ声が聞こえたので、振り向くと、ブラックシャドウがテーブル席から手を振っていた。彼の向かい側には、ずんぐりむっくりとしたヒゲモジャの小さい人が腰掛け、黙々とパンを口に運んでいる。あの体型は、ドワーフに間違いない。
わたしがゆっくりとテーブルに歩み寄ると、ブラックシャドウは口元をほころばせ、
「どうかね、考えてくれたかね?」
「ええ、これも何かの縁でしょう。パーティーを組もうというなら、受けてもいいわ」
「そうか、それはよかった」
と、ブラックシャドウ。ただ、相変わらず目は笑っていない。
「ところで、この人は?」
「ああ、彼は北のドワーフの王国出身の、フリードリヒ・フォン・ホフマン。急な話だが、彼も御落胤捜しに加わることになったのだ。だから、懸賞金は3人で3分の1ずつ山分けで、もちろん必要経費の負担も同様」
なんだか、昨日の話と少し違うのではないか。善意に解釈すれば、昨晩、わたしと別れた後、このドワーフを口説いたということになるが……
プチドラはわたしの肩によじ登り、耳元でそっとささやく。
「こいつら怪しいよ。考え直すなら今かもしれない」
確かに、店を出た途端、この2人が強盗に豹変する可能性もないわけではない。そうでなくても、御落胤を見つけ出した場合には(人数が増える分)話が複雑化するのは目に見えている。でも、今更止めにするわけにもいかないだろう。
わたしは軽くプチドラを制し、
「カトリーナ・スミスです。それなりに魔法は使えますので、よろしく。そして、これがペットのプチドラ」
わたしは口からでまかせの自己紹介をし、ブラックシャドウ、ホフマンと握手した。実際に魔法を使うのはプチドラだけど、フィクションとしては妥当なところだろう。
ホフマンは自己紹介で、「自分は北のドワーフの王国の由緒ある家系の出身であり、今は真の強さを求めて諸国を遍歴している」と自慢げに語った。ただし、プチドラの(内緒の)解説によれば、「(話が本当なら、)多分、カレは大家族の末弟で、爵位や官職や領地を親から受け継ぐ可能性がゼロに近い。旅を続けながら、あわよくば仕官の口を見つようとしているのではないか」とのこと。
反対に、ブラックシャドウは、ほとんど自分のことを語らなかった。興味はないのでどうでもいいけど。なお、ホフマンに御落胤の話を持ちかけたのは、つい今しがたで、ホフマンは二つ返事で引き受けたという(説明には、一応、不自然な点はないが)。




