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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第5章 旅の道連れ
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再びブラックシャドウ

 男は、この前に見たときと同様に、黒いレザーアーマーの上に黒いマントを身にまとっていた。背は高く、やや痩せ気味、氷のように冷たい眼光でわたしを見下ろしている。

「どうぞ。あなたは、確か…… ブラックウィドウさん?」

「この前は同席させてもらって、どうもありがとう。だが、それはそれとして、私は『ブラックウィドウ』ではなく、『ブラックシャドウ』。記憶が不正確なら、訂正を願いたいものだな」

 男はニコリともせず、また反対に、気を悪くした風もなく言った。冗談を受け付けない性格なのだろうか。

「これは失礼しました、ブラックシャドウさん。相席は構わないので、どうぞ」

 ブラックシャドウは、近くを通りかかったウェイトレスに料理を注文すると、ゆっくりと腰を下ろし、

「ふぅ~~~……」

 疲れたように、大きく息を吐き出した。

「いきなりため息ですか?」

「いや、ちょっとした事件というと大袈裟だけれど、『ソロ』には辛いものがあるね」

 ブラックシャドウはプチドラに手を延ばしかけたが、すぐに、思い出したように手を引っ込め、

「ああ、これは失礼、別に危害を加えようというのではないのだが……」

 プチドラは牙をむき、低い唸り声を上げ、まるで主人を守ろうとする子犬のように、ブラックシャドウを威嚇している。


 しばらくすると、料理が運ばれてきた。ビーフ・ストロガノフは、どこにでもあるような、ごく平凡なもの。それに対し、ブラックシャドウの前には、色とりどりのキノコを山盛りにした皿が置かれた。

「ここ数日は、菜食主義者でね」

 ブラックシャドウは皿を口にあてがい、キノコを流し込むようにして、あっという間に料理を平らげてしまった(なんとダイナミックな!)。こちらはまだ、料理には手をつけていないのに。

「う~む、まあまあかな。シャグマアミガサタケの毒抜きもしっかりしているようだ」

 シャグマ……? 毒抜き?? なんだかよく分からないけど、この男、意外とぺダンチックな趣味の持ち主かもしれない。

 ブラックシャドウはハンカチで丁寧に口を拭うと、

「そういえば、あなたの用は済んだのかね? いや、別に、詮索するつもりはないが」

「ええ、なんとか…… ブラックシャドウさんの方は、いかがですか? 御落胤捜しでしたっけ?」

 すると、ブラックシャドウは首を左右に振り、

「うまくいっていれば、今頃は、きっと左うちわだよ。この北方のどこかに御落胤がいることは間違いないんだ。まあ、居場所が分かっていれば、こうして捜索する必要はないわけだがね」

 それは確かに、そのとおりだけど……

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