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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第4章 巨人の村
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プチドラも疲れ気味

 ほのぼのとしたクルグールスク村とは打って変わって、なんだか、きな臭くなってきた。灰色の空の下、理由はないが、わたしの行く末を暗示しているような気もして、あまり気持ちのよいものではない。

「町に急ぎましょう。いつまでも、こんなところに留まっていることはないわ」

 隻眼の黒龍は、ゆっくりと宙に舞い上がった。死体はそのままだけど、わざわざ埋葬する義務も義理はない。そのうちに、熊や狼の胃袋に収まるだろう。

 北の大河は蛇行を繰り返し、西へと続く。眺めはよいが、今は眺望を楽しむ気分にならない。

「ねえ、プチドラ、さっきの連中は、一体、誰にやられたんだろう」

「分からないけど、戦闘の際に一刀のもとに斬り倒されたとすれば、相手は相当な使い手だよ。灰色マント以外の死体はなかったから、一方的にやられたのかな。灰色マントの他のメンバーは逃げ出したんだろうね」

「相手は1人かしら。それとも、もっと多い?」

「相手が1人だとしたら…… 常識的には考えにくいけど、もしそうなら、それこそ神様みたいにムチャクチャ強い剣術の達人だよ。灰色マントにとっては、運がなかったと諦める以外ないだろうね」

「灰色マントの正体からして……ついでに言えば、あの悪趣味な兜も含めて、よく分からないんだけど、一体、何者?」

「それはボクにも分からないよ。少なくとも、真っ当な職業の人ではないと思うけどね」

 結局、何から何まで分からないことだらけ。とにかく怪しいとしか、言い様がない。


 その後は取り立てて言うほどのことはなく、クルグールスク村を出て3日目の夕方に、グレートエドワーズバーグの町に着いた。町から少し離れた地点で地上に降りると、隻眼の黒龍は、いつものように、子犬サイズのプチドラに体を縮め、わたしの胸にチョコンと収まった。

 しかし、プチドラはすぐに耳をピンと立て、わたしの肩に飛び乗り、周囲を見回す。

「どうしたの? また、誰かに監視されてるの?」

「ごめん。今度は本当に気のせいだったみたいだ。マスター、あれを見て」

 プチドラが指した先には、野ウサギが跳ねていた。ドラゴンに驚いて逃げていくところかもしれない。プチドラにしては、珍しいこともあるものだ。

「プチドラ、あなたの神経も、少々、疲れ気味じゃない?」

「面目ない……」

 プチドラは恥ずかしそうに手で顔を覆った。


 わたしはプチドラを抱き、やや駆け足で町に向かった。入口(城門)で(いつぞや行商人から窃取させた)通行証を見せ、街中で適当に冒険者らしい一団にくっついて、この前と同じくクラーケンの宿に。とりあえず、宿でゆっくりと休むことにしよう。

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