表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
序章 帝国宰相の手紙
3/100

宮殿の中庭で

 隻眼の黒龍は宮殿の中庭にゆっくりと降りた。建物からは数人の官吏が現れたが、ドラゴンの姿を目にすると、肝をつぶして宮殿内に逃げ帰った。

 隻眼の黒龍は体を縮め、子犬サイズのプチドラに姿を変えると、

「いきなりアポなしで大丈夫かな。ハッキリ言うと、非常識極まりないというか……」

「非常識はお互い様でしょ。帝国宰相が『すぐに帝都まで来られたし』というから、そうしただけよ」

「いや、でも、やっぱりマナーというか、エチケットというか…… もし、帝国宰相が留守だったりすると、こちらとしても無駄足になるわけだから」

 もし、そうなったら、腹いせに宮殿を破壊しちゃう……もちろん、これは口に出さなかったが。


 その時、背後から、

「誰かと思ったら、おまえか……」

 と、声がしたので振り向くと、少々あきれ顔の帝国宰相が立っていた。

「あら、これはこれは帝国宰相、御機嫌うるわしく…… このたび、宰相より手紙をいただきましたので、『すわ一大事、帝国宰相の身にもしものことがあっては大変』と、大急ぎで飛んでまりました」

 われながら、よくもこんな心にもないことが言えるものだ。

 ところが、上には上がいるもので、

「わが娘よ、待っておったぞ。そなたがこんなにも、わしの身を案じてくれているとは、大変うれしく思う」

 と、帝国宰相はいきなりわたしを抱きすくめ、大袈裟に喜びを表現した。でも、こちらとしては願い下げで、いわゆるキモイだけ、だったりする。

 そして、おもむろに帝国宰相は立ち上がり、周囲をキョロキョロと見回して誰もいないことを確認すると、

「来てもらってすぐに申し訳ないが、ちょっと、中庭の散策に付き合ってくれぬかな?」

「はい、喜んで」

 誰かに聞かれてはヤバイ話なのだろうか。宮殿の中では、誰が聞き耳を立てているかも知れない。中庭でも絶対に安心というわけにはいかないが、宮殿内で話をするよりも多少はマシだろう。


 わたしは帝国宰相に連れられ、左右に幾つも並んだ噴水の間を抜け、色とりどりの花々が植えられている花壇を横切った。

 帝国宰相は、もう一度、慎重に周囲を見回すと、

「もうそろそろ、大丈夫であろう」

「『大丈夫』ですか?」

「いや、なに…… あまり大きい声では言えない話なのでな。そなたも、これからここで耳にすることは、絶対に他言無用に願いたい」

 帝国宰相は、ギロリと鋭い視線をわたしに向けた。さて、一体、どんな危ない話を聞かされることやら……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ