巨人と灰色マントの集団
大河の畔に、大小取り混ぜて幾つもの人影が映った。大きい方は電信柱の高さくらい、10メートルを超えているだろう。巨人とヒューマンが入り乱れ、何やら揉め事のようだ。
「マスター、どうする? 行ってみる?」
「あまり気は進まないけど…… とりあえず、もう少し、近づいてみましょうか」
「了解」
隻眼の黒龍は、十分に高度を保ちながら、距離を詰めていく。それにつれ、状況が少しずつ明らかになってきた。見ると、巨人5人とヒューマン1人が、灰色のマントをまとい(バケツかゴミ箱のような)円筒型の兜をかぶったヒューマン15人と対峙している。双方とも武器を構え、どうやら、ただ事ではない様子。
やがて、灰色マントの集団が、一斉に行動を起こした。目にも留まらぬスピードで斬りかかっていく。巨人は渾身の力を込めて棍棒を振り下ろすが、なかなか当たらない。
隻眼の黒龍が、なおも近づいていくと、なぜだか灰色マントの集団が慌てだした。
「げっ、あれは!」
「仲間がいたのか!?」
「不利な戦いをすることはない。一旦、撤退する!」
何を勘違いしたのか、灰色マントの集団は、サッと潮が引くように退散していった。
「ΩΘЛЧЩ!!!」
巨人のうち1人が、隻眼の黒龍を指差して叫んだ。でも、わたしには、巨人が何を言っているのかサッパリ分からない。
「大丈夫。ボクに任せて」
隻眼の黒龍は、その巨人に近づき、巨人の言葉で何やら話し始めた。一体、何ヶ国語ができるんだろう。話し合いが始まってしばらくすると、巨人はニッコリとして隻眼の黒龍と握手した。
隻眼の黒龍は、顔をわたしに向け、
「マスター、話はついたよ。この人(巨人)たち、クルグールスク村の住民らしいんだ。ボクたちのために村で宴会を開いてくれるんだって」
一体、どういう脈絡なのかよく分からないが、巨人が言うには、「最近、村の近辺に冒険者風の怪しげな連中が出没するようになったので、自警団を作って用心していたところ、先刻、(初めて目にする)謎の灰色マント集団が現れ、問答無用で襲いかかってきた。連中が隻眼の黒龍に驚いて逃げたということは、結果的に隻眼の黒龍に助けられたことになるから、その礼をしなければならない」ということ。
なんなんだか……といったところだけど、とりあえずクルグールスク村の住民と仲良くなっておけば、御落胤絡みの話をきけるかもしれない。
わたしは巨人と一緒にいるヒューマンをチラリと見た。(ヒューマンとしては)とにかく大きい。2メートル30センチを軽く超えている。ありがちな展開だけど、こんなに大きい人といえば……




