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ザ☆旅行記Ⅶ 奇貨おくべし  作者: 小宮登志子
第3章 クラーケンの宿
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いかにも怪しい男

 男は、黒いレザーアーマーの上に黒いマントを身にまとっている。歳は30前後だろう。背は高いが、やや痩せている。鋭く、氷のように冷たい眼光は、この男がタダ者ではないことを物語っていた。

「どうぞ。わたしは構わないわ」

「ありがとう」

 男はゆっくりと椅子に腰を下ろした。

 プチドラはわたしの肩によじ登り、耳元でそっとささやく。

「絵に描いたような怪しい男だけど…… マスター、気をつけて」

 わたしは、「分かってる」と小さくうなずいた。


 やがて、先ほどの少女が、お盆に料理を載せてテーブルに運んできた。少女は、わたしの前に料理を並べ、男の注文を聞き、先程と同じようにカウンターのところまで戻っていく。ちなみに、わたしが注文したのは、北の大河を遡上するサケのマリネとその他諸々(多少はヘルシーを意識)。ただ、目の前に、いかにも怪しげな男が腰掛けているとあっては、ゆっくりと味わうような雰囲気ではない。

 男はプチドラをしげしげと見つめ、

「見慣れない生き物だが…… ペットかね?」

「そうよ。南方の辺境地帯で捕まえたの」

「ほぉ~」

 男が手を伸ばすと、プチドラは小型の愛玩動物のように、サッとわたしの背後に身を隠した。

 すると、男は苦笑して、残念そうに首を何度か左右に振り、

「嫌われてしまったようだな。私はそんなに恐ろしそうに見えるのかな」

 わたしは適当に話を合わせ、

「かもね。でも、いきなり噛みつかれなかっただけ、マシかもしれないわ」

「噛みつかれるのかい。物騒なものを飼っているんだな」


 しばらくすると、この男にも料理が運ばれてきた。注文したのは分厚いステーキだった。男はガブリと肉にかじりつくと、それをほんの数分で平らげてしまった。わたしはまだ、半分も食べていないのに。

「う~む…… 味は悪くない。しかし、格別に美味とも言えない。値段相応に、まずまずの味かな」

 男はハンカチを取り出し、丁寧に口を拭った。そして、いきなり切り出した。

「ところで、あなたも例の御落胤を捜しに来たのかな?」

「御落胤?」

 わたしは、とりあえず、よく分かっていないようなフリ。少なくとも、この男の正体が分かるまでは、自重するに限る。

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